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明屋海岸

島根県隠岐郡海士町豊田

隠岐島前の中ノ島(海士町)の北東部を縁取り,海蝕崖や海蝕洞が約1kmにわたって連続する景勝地 です。


キーワード:宇受賀玄武岩 アグリチネート スコリア丘 噴火口 鮮新世


(執筆:村上 久)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「崎」より

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みどころ

全景

写真1:明屋海岸を遊歩道から望む

  明屋海岸は隠岐島前の中ノ島(海士町)の北東部を縁取り,海蝕崖や海蝕洞が約1kmにわたって連続する景勝地 (写真1)です。中ノ島を構成する主な岩石は、約630〜530万年前に噴出した溶岩と火砕物です。この時代の島前は現在の中ノ島、知夫里島、西ノ島が外輪山を形成し、西ノ島の焼火山を中央火口丘とするカルデラ火山でした。またこの火山は島前火山とよばれております。その後,約280万年前には明屋海岸を中心とした玄武岩の噴火が始まり、大量の火砕岩を噴出して溶岩は西の諏訪湾まで到達しました。これらは島前で最も新しい火山岩で宇受賀玄武岩と呼ばれています。明屋海岸は、この時の火山活動によってできた直径が約1kmもあるスコリア丘です。このスコリア丘は、玄武岩マグマが発泡した多孔質な火山砕屑物(スコリア)や、火山弾を含むさまざまな火山噴出物でできており、これらを直接手で触れたり観察することができます


アクセス

  アクセス方法:自家用車あるいはレンタカーを利用する場合は、菱浦港から豊田方面に約20分。定期観光バスコース(3月21日〜11月20日)に組み込まれています


関連する情報

海士町役場: http://www.town.ama.shimane.jp/


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園特別保護区


地質学的な意義

  明屋海岸で見られる火山噴出物は、玄武岩の溶岩や火口から放出された高温で粘性のやや低い多孔質岩片が堆積して軽度に溶結した火砕岩(アグルチネート)です(写真2)。火砕岩は平行〜斜交層理が発達したり、層理が認められず塊状であったりしています。火砕岩には数cm〜25cmの赤褐色をしたスコリアが含まれ、時には長径1mにもおよぶ火山弾も含まれています(写真3)。また、同じ岩質のマグマがスコリア丘を高角度に貫入する岩脈や、地層に平行に貫入したシルを見ることができ、手で触れることのできる噴火口の断面と言えるでしょう.

全景

写真2:アグルチネートの露頭写真
全景

写真3:アグルチネート中に見られる火山弾

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