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三瓶小豆原埋没林

大田市三瓶町多根ロ58-2

直立する巨大な幹、その根元に横たわる流木群。三瓶小豆原埋没林には見る者を圧倒する迫力があります。



キーワード:三瓶火山 埋没林 岩屑なだれ 天然記念物 縄文時代


(執筆:中村唯史)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「石見大田」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

写真1

埋没林とは、過去の森林が成育時の位置に根を張ったまま埋もれたものです。三瓶小豆原埋没林は三瓶火山の活動によって埋積されたもので、大木の幹が樹皮もそのままに残存していることが特徴です。発掘によって確認された立木状態の埋没樹は30本で、大半は直径1mを超える大径木です。最長のものは胸高直径2.5m、幹高12.5mに達します。樹種は流木も含めると80%以上がスギで、トチノキ、ケヤキ、カシ類などの広葉樹が若干伴われます。放射性炭素法による年代測定によって、これらの樹木はおよそ3500〜3700年前のものであることがわかりました。これは縄文時代後期に相当します。

これらの大木の幹を埋積している地層は、下から「岩屑(がんせつ)なだれ堆積物」、「火砕流(かさいりゅう)堆積物」、「河川成堆積物」の3層に大別できます。岩屑なだれは、火山活動に伴って山体崩壊が発生したことで生じました。その力は強大でしたが、小豆原地区は直撃コースからはずれており、隣の谷との合流点から逆流したり、尾根の鞍部を越えて勢いが衰えた土砂だけが流れ込みました。そのため、当地の木々はなぎ倒されずに立ったままで埋積されたのです。岩屑なだれに続いて火砕流が流れ込み、これに覆われた部分では樹皮表層が炭化しています。さらに、河川が運搬した火山灰質の土砂によって木々は地中深く埋積されました。埋積した木々は地下水に包まれて空気から遮断されたために腐朽がほとんど進行しませんでした。その結果、世界的にも例がないほどの長大な幹が残存する埋没林が形成されたのです。

三瓶小豆原埋没林は、原始の森林が保存された貴重な資料であると同時に、火山活動にともなう現象を示す証拠として高く評価され、国の天然記念物に指定されています。三瓶小豆原埋没林公園では、地下展示棟で発掘状態のまま展示公開を行なっており、迫力ある埋没林を間近で見学することができます。

写真2と3


アクセス

JR大田市駅から車で20分
石見交通山口線バスで小豆原口下車。徒歩10分(1日4便)


関連する情報

三瓶小豆原埋没林公園 http://nature-sanbe.jp/azukihara/ TEL0854-86-9500

島根県立三瓶自然館サヒメル http://nature-sanbe.jp/sahimel/index.htm TEL(0854)86-0500

*三瓶小豆原埋没林公園からは、車で10分。埋没林標本3本を展示しているほか、成因などについての展示を行っています。


天然記念物などの指定情報

国指定天然記念物(平成16年2月27日)


地質学的な意義

3500〜3700年前の三瓶火山の活動で形成された埋没林。スギが中心で、巨大な幹が直立状態で残存していることが特徴。岩屑なだれ、火砕流、せき止めによる河川成堆積の過程で埋積された。1983年のほ場整備で立木が出土し、松井整司氏が三瓶火山の活動で埋積された埋没林の可能性を指摘した。1998年に島根県が行った発掘調査で、多数の埋没立木が発見された。

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