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茶臼山と真名井の滝

松江市山代町

松江層玄武岩からなる茶臼山は古代には神聖な山であり、周辺には真名井の滝、真名井神社、山代二子塚古墳、出雲国府跡などの名所や史跡などが多数見学でき、出雲国の中心であった事を実感できます。

  1. 茶臼山
  2. 真名井の滝
  3. 出雲国府跡
  4. 真名井神社
  5. 山代方墳
  6. 山代二子塚古墳
  7. 茶臼山登山道入口
  8. 風土記の丘
  9. 岡田山古墳
  10. 神魂神社

キーワード:松江層 アルカリ玄武岩 神名樋野 史跡 中新世

(執筆:松本一郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「松江」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

写真1

茶臼山は、松江中心市街地の南東およそ5kmの位置(山代町)に南北約1.0km、東西約1.3kmをしめる、標高171.4mの山体を形成しています。茶臼山は、およそ1000万年前に活動したアルカリ玄武岩の黒灰色のち密な溶岩で主に構成されています。含まれる主な斑晶鉱物は、かんらん石、単斜輝石、斜長石から成ります。このアルカリ玄武岩の溶岩は松江層に含まれるもの(松江層玄武岩)であり、松江市内では嫁が島、床几山、上乃木丘陵、東光台、及び楽山といった松江市では耳慣れた島、小丘陵や小台地を形成しています。茶臼山はその中でも最も標高の高いものとして、遠方から眺めると富士山のようなきれいな山体をしています。また眺める角度により2つの峰をもった山体に見えます。奈良時代の出雲国風土記では、神名樋野(かんなびぬ)と呼ばれる、神聖な山であり、ふもとに位置する島根県最大の前方後方墳である山代二子塚古墳をはじめ、出雲国府跡、真名井神社など、古代出雲の中心地として栄えた地でした。また、中世には交通の要所と見晴らしの良さから山城として活用されました。山頂には二等三角点があり、松江市内や宍道湖、中海、大山や島根半島を含め、すぐ近くの出雲国府跡や風土記の丘などが見渡せる眺めの良い場所となっています。また、ハイキングコースにもなっています。

写真2,3

真名井の滝は、茶臼山の南東麓に位置する落差約2mの滝であり、滝としては規模の小さなものですが、茶臼山の玄武岩に染みこんだ水が地下水となり山麓より湧水として地表に表れたもので、古代より神水として神事に使われていたとされています。もともとは、真名井の滝より200m程西側に位置する伊弉諾尊(イザナギノミコト)を祀った真名井神社も、この滝の側にあったとされています。近年では玄武岩と接触したその水質が、硬質でアルカリ性である事から日本酒の醸造に適しているとされ、仕込み水としても活用されています。

写真4


アクセス

茶臼山:松江駅からバスで約15分(山代町下車)
頂上まではバス停より約35分程

真名井の滝:松江駅からバスで20分(大庭十字路、もしくは風土記の丘入り口下車)
徒歩にて20分程度


関連する情報

松江市HPに関連情報:http://www.kankou-matsue.jp/history/rekisi4.htm

鹿野和彦・山内靖喜・高安克巳・松浦浩久・豊遥秋(1994), 松江地域の地質(5万分の1地質図幅「松江」). 地質調査所

坪田智行・松本一郎(2007), 松江層玄武岩類の記載岩石学的研究.島根大学教育学部紀要(自然科学), Vol. 41,171-177.


天然記念物などの指定情報

茶臼山周辺の神社、古墳など多数のものが国指定・県指定の文化財・史跡に認定されています。


地質学的な意義

茶臼山を構成するアルカリ玄武岩は、松江層中に存在が確認されている玄武岩〜粗面安山岩(松江層玄武岩)の中でも最も二酸化珪素の含有量が低い特徴を有しています。また、かんらん石が多くクロムスピネルを有するなど、マントルで発生する初生的なマグマの特徴を保持しており、地下深くマントルでのマグマ発生時の地質学的な状況の解明が期待されます。島根地質百選の「嫁が島」も松江層玄武岩の一つです。また、茶臼山を含めた松江層中の玄武岩〜粗面安山岩は、それぞれの分布ごとに鉱物の組み合せや化学組成が異なるなど、比較的狭い範囲に噴出した溶岩にも関わらず、その岩石学的な違いが認められ、肉眼やルーペでもその色合いや斑晶鉱物の量比や種類の違いが観察できます。

写真5

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