石見地方のジオサイト

地倉沼と鍋山

島根県鹿足郡津和野町

地倉沼はモリアオガエルの生息地で、日本の重要湿地500選に指定されています。

右の地図の赤丸は、駐車できる所を示しています。

キーワード:せき止め湖 溶岩ドーム モリアオガエル 青野火山群 重要湿地500選

(執筆:加藤芳郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「津和野」より

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みどころ

写真1, 2

地倉沼は周囲を標高500m〜700mの山に囲まれた天然の湖沼です。沼底の標高は約430m、面積は約4万m2です。水位は季節によって大きく変動するようです。梅雨時期には満々と水をたたえ幻想的な雰囲気が感じられるものの、秋から冬場には沼底のほとんどが顔をのぞかせ、平坦な草っ原が広がっているだけです(写真1と写真2)。沼底に立つと、木々のざわめきと鳥の鳴き声だけの不思議な空間が実感できます。湛水した沼の様子は島根県自然環境課のサイトに載っています。

今の地倉峠はかっては谷の出口でした。数10万年前に地倉沼北側の地倉山(標高622m)から噴出した溶岩が、この谷口を埋めたため地倉沼ができたのです。「環境省・日本の重要湿地500」によると、地倉沼では水域からハンノキ林まで自然の湿地群落が見られ、人為的な影響のない湿地植生は山陰・山陽では大変貴重な存在とされています。また、「しまねレッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物)」で『準絶滅危惧』に選定されているモリアオガエルが生息しています。

地倉沼から東方へ直線で約2kmのところに、変わった形の山があります(写真3)。直径400mほどの非常に小さい火山で、鍋を伏せたような形から鍋山(標高614m)と呼ばれています。

写真3, 4


アクセス

直地集落で国道9号からJR山口線・青野山駅方向に向かいます。津和野川を渡った先に車を止めるところがあります。または国道沿いの直地児童館に駐車します。東側の直地踏切の手前から線路に沿って進み、千倉大権現の赤い鳥居を目印に地倉沼を目指します。沼までゆっくり登っても1時間半、下りは約30分です。全路線が中国自然歩道となっており、整備されています。

地倉沼から鍋山のある島までは、中国自然歩道を約3kmの道のりです。または、津和野町小直から島高原農道に入ると、約5kmで鍋山の麓に着きます。


関連する情報

島根県環境生活部自然環境課:http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/shimane/
島根県立自然公園と自然観察モデルコースの両方に紹介があります。

環境省日本の重要湿地500:http://www.sizenken.biodic.go.jp/wetland/index.html


天然記念物などの指定情報

青野山県立自然公園


地質学的な意義

地倉山と鍋山は、第四紀更新世にあたる約128万年前から約10万年前に活動した青野火山群に属します。ともに地倉山の約3km南にそびえる青野山と同系列の角閃石安山岩からなる単性火山で、特に鍋山は溶岩ドームの見事な形状を見せてくれます。なお、地倉山は西側半分がなくなったような形状をしています。元は青野山と同じように同心円状の溶岩ドームだったのでしょうが、津和野川の浸食によって現在の形となっています(写真4)。

地倉沼の成因は爆裂火口に湛水してできたという説もありますが、沼に面した南縁や東縁の斜面にはこの一帯の基盤岩である匹見層群の凝灰岩が露出していますので、せき止めと考えるほうがいいようです。西端の沼底付近には、谷口を埋めた溶岩の転石がたまっています。青野火山群の詳しい紹介は、石見地方のジオサイトのうち「青野山と笹山の湧水」をご覧になって下さい。

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