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権現山洞窟

島根県松江市美保関町森山権現山1338番地

  1. バス停
  2. 権現山遺跡
  3. サルガ鼻遺跡

キーワード:縄文時代 流紋岩 海食洞 住居跡 土器


(執筆:新宮敦弘)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「境港」より

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みどころ

写真1

権現山洞窟(ごんげんやまどうくつ)は、中海と日本海を結ぶ境水道に面した島根県松江市美保関町森山にある海食洞(かいしょくどう)です。海食洞といっても現在の海岸にあるのではなく、付近を走る国道431号線よりも山側の標高5m付近にあります。おそらく昔は海岸で形成された海食洞でしょうが、その後の海水準低下などにより現在の位置にあるものと考えられます。海水準が現在より5m高くなると弓ヶ浜半島の広い範囲が水没し、境水道も現在よりも広かったと考えられます。

この海食洞は二つの穴がぽっかりと開いており、入口8〜9m、奥行3〜4mで身を屈めると人が入れる大きさです。露出している岩盤は、成相寺層の流紋岩で、よく発達した柱状節理が特徴的です。(写真1)

海食洞のなかからは縄文時代後期〜晩期の土器や骨格器、石鏃(せきぞく、矢じり、黒曜石およびサヌカイト製)などが発見されており、「権現山洞窟住居跡」として国指定史跡となっています。これら遺物は、発見者の故佐々木謙氏宅、島根県立八雲立つ風土記の丘資料館に保管されています。 遺物は、表層の砂まじり礫層(厚さ約20cm)の下の砂層(厚さ約40cm)より出土していますが、炭や灰、貝殻なども見つかっており住居跡と考えられています。

写真2


アクセス

松江駅より一畑バス美保関方面に乗り、万原バスターミナルで町民バスに乗り換え、森山郵便局前下車。バス停から東へ徒歩2分(松江駅からはおよそ1時間)。自家用車の場合、付近に駐車場はありません。


関連する情報

メテオプラザ:http://www.v-museum.pref.shimane.jp/special/vol05/museum1/

付近には山陰・島根ジオサイト地質百選の惣津海岸があります。

文献

  • 竹広文明他、島根半島洞窟遺跡の研究 -島根県八束郡美保関町サルガ鼻燈台洞窟遺跡の試掘調査-、「汽水域研究」3、1996
  • 竹広文明他、サルガ鼻燈台洞窟遺跡の第1次発掘調査、「汽水域研究」4、1997
  • 佐々木謙・小林行雄、出雲国森山村崎ヶ鼻洞窟及び権現山洞窟遺跡 -中海沿岸縄文式文化の研究1-、「考古学」8-10、1937
  • 山本清、美保関町サルガ鼻・権現山洞窟住居跡について、「島根県文化財調査報告書」第3集、1967

天然記念物などの指定情報

昭和17年10月14日、国指定史跡「権現山洞窟住居跡」


地質学的な意義

権現山洞窟と同様な海食洞が中海に面したサルガ鼻にあり、サルガ鼻洞窟と呼ばれています。サルガ鼻も権現山同様に成相寺層の流紋岩からなります。こちらは大小4個の洞窟よりなり、深い洞窟は高さ・幅ともに5m、深さ60mにも達します。この洞窟からは人骨を含む縄文時代前期末〜晩期〜弥生時代の遺物が多く見つかっています。これらの遺物は島根大学および島根県埋蔵文化財調査センター、八雲立つ風土記の丘資料館に保管されています。サルガ鼻洞窟を見学するルートはなく、山越えをするか、あるいは船で近づく以外ないようです。

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