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江津の青色片岩

江津市波積町南

  1. 青色片岩
  2. 泥質片岩
  3. 緑色片岩

P: 駐車場スペース

キーワード:周防変成岩 三郡変成岩 藍閃石 沈み込み帯 ジュラ紀


(執筆:高須 晃)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「浅利」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

写真1,2

島根県の益田から浜田にかけての地域には三郡変成岩(周防変成岩)とよばれる地下深くの高圧のもとでできた変成岩が分布しています。JR山陰本線浅利駅東方約7 kmの南川に沿う道路の切り割りには、ある面に沿ってペラプラと剥げやすい性質をもった結晶片岩とよばれる変成岩が見られます。中向井(から東南東方向へ向かう道路が大きく左に屈曲するところ(道路の右側にカーブミラーがあります)からその手前約250mの地点にかけて道路沿いに濃い青色から藍色をした岩石があらわれています。この岩石は青色片岩とよばれる変成岩の一種です。この青色片岩を薄く削って岩石観察用の顕微鏡(偏光顕微鏡)で見ると写真3のように青色をした細長い鉱物がたくさん含まれています。これは藍閃石という角閃石の仲間の鉱物で、角閃石の中ではカルシウムが少なくナトリウムを多くふくむ化学的特徴があります。藍閃石は高圧で低温の条件でのみできる特殊な角閃石です。青色片岩はもともとは海底にたまった玄武岩質の岩石と考えられています。この岩石が地下深くの高圧で低温の条件におかれてできたのが青色片岩です。

写真3

カーブミラーのところからおよそ20 m北東方向へ行くと、こんどは数mmごとに白黒の縞が繰り返している岩石が見られます(地点(2))。これは泥質片岩とよばれる変成岩で、もともとは海底にたまった泥岩と考えられています。さらに道路をおよそ150 m行くと、表面は褐色ですが、ハンマーなどで割って内部を見ると淡い緑色をした変成岩が約40 mにわたって見られます(地点(3))。この変成岩は緑色片岩とよばれます。緑色片岩が緑っぽい色をしているのは、この岩石の中にアクチノ閃石という緑色をした角閃石がたくさん含まれているからです。このがけをよく見ると、緑色片岩の中に先ほどの青色片岩の薄層がはさまれているのをみつけることができます。緑色片岩ももともとは玄武岩質の岩石ですが、青色片岩とは化学組成が少し異なっていたと考えられます。


アクセス

JR浅利駅より石見交通バスで「波積」へ。ここから南方へ都治川の橋をわたり、中向井経由で青色片岩のがけ(地点(1))まで約4 km、 1時間。バスの便は朝夕と昼に数本ずつしかないので事前にダイヤを確認の上、利用する必要があります。

自家用車利用の場合は、JR三江線川平駅付近から東方へ上津井、四熊、中向井を経由して青色片岩がけまで約16 km。国道9号線浅利から東方へ、中都治、上都治、下本郷、中向井経由で青色片岩のがけまで約10 km。いずれのルートも道路の狭いところがあるので、運転には注意が必要です。また、駐車スペースは青色片岩露頭手前道路脇〈地図のP地点付近〉に、小型の乗用車1、2台分しかありません。


関連する情報

参考図書:高須 晃・千貫 浩(1998〉江津の三郡変成岩.「島根の自然」編集委員会編,島根の自然をたずねて.築地書館.


天然記念物などの指定情報

なし


地質学的な意義

青色片岩のように藍閃石を含むような変成岩は地球上でもとりわけ地温勾配の低い場所でできたとされています。地温勾配が低いということは地下深くにもかかわらず地温があまり上がらないことを意味します。ここで見られる青色片岩は地下40 kmの深さに相当する高圧でありながら、地温は450℃ぐらいという低温の条件でできたことがわかっています。450℃が低温というのは、現在の日本列島の地温勾配からすると、地下10数kmで地温が450℃になるところがあることと比較してのことです。青色片岩ができるような地温勾配の小さい条件は、プレートテクトニクスでいう海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む地域にのみ見られます。ここで見られる変成岩類は、もともとは海底にたまった泥岩や玄武岩質の岩石が海洋プレートの沈み込みとともに地下およそ40 kmまで引きずり込まれ、低温高圧の条件の下で変成岩に変わったものといえます。結晶片岩をつくった海洋プレートの沈み込みは今から約1億8000万年前とされています。

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