山陰・島根ジオパーク実現に向けて

総合理工学部 教授 赤坂 正秀

私たちは、2007年度に島根大学萌芽研究プロジェクト「石見銀山をはじめとする山陰地域地質資源の総合資源化に関する研究」を実施しました。そのプロジェクトの基本的視点(フィロソフィ)は、「島根県の地域活性化を図るためには、石見銀山の世界遺産登録に象徴的に示されている島根県の本質的長所である豊富な自然、資源、歴史ある文化を保護・保全しつつ、持続可能な産業振興を実現すべきである」というものでした。

この視点に立って、2007年度は

  1. 石見銀山をはじめとして歴史的に重要な貢献をしてきた県内の金属鉱床,および現在も重要な産業である非金属鉱床の代表的なものの再調査による基礎研究資源および教育資源,生産資源としての再評価,
  2. 島根県などの自治体および産業界の関係者を含めてのジオパーク構想の立案および実現に向けての協議および準備、

を行いました。このプロジェクト研究の中で、「山陰・島根ジオパーク」構想は特に注目を集めました。

「ジオパーク」は、

  1. 次世代のために地質遺産を守ること(保全)、
  2. 地質景観や環境問題について広く大衆を教育し、地質科学に研究の場を提供する(教育)、
  3. 持続可能な開発を保証する(観光:ジオツーリズム)

ことを実現するものです。「ジオパーク」は、私たちがプロジェクト研究を行った際にとった「基本的視点」にまさに合致するものです。国としても「観光資源」を生かした地域活性化の振興を決定しています。

2008年4月現在世界では54箇所がジオパークとして世界ジオパークネットワークに登録されていますが、日本ではまだ一箇所も登録されていません。現在、北海道から九州までの各地で世界ジオパークネットワークにジオパークとして登録するための取り組みが進められつつありますが、島根は日本を代表するジオパークとして世界ジオパークネットワークに登録される資格を十二分に持っています。それは、島根には豊富な地質資源・遺産(考古学的遺産も含む)があること、研究・教育資源としての科学的価値を与えるための高いレベルの基礎研究の実績があること、島根県の県民・自治体・業界などが島根の産業振興・観光産業振興に対して極めて積極的であること、が理由です。

島根大学は大学憲章のなかで地域貢献をすることを掲げており、アクションプランでは「石見銀山、たたら製鉄の自然科学的研究、ならびに自然資源形成の自然史・・・に関する研究」を推進することを明記しています。わたしたちは、2008年度萌芽研究の成果に基づいて、引き続き「山陰・島根ジオパーク」実現のために努力いたします。