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観音滝

島根県江津市桜江町鹿賀

安山岩の岩片を特徴的に含む凝灰岩でできている滝と、その斜面に系統的に刻み込まれた割れ目を観察できます。

破線(1):推定断層
破線(2):小断層帯


キーワード:桜江層群 火山礫凝灰岩 溶結 中国自然歩道 始新世


(執筆:反田博文)


国土地理院発行1:25000地形図「川本」使用

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みどころ



写真1:観音滝全景


写真2:滝に見られる主な節理
  赤線: 北東―南西系高角度の節理
  黄線: 北西―南東系高角度の節理
  青線: 北―南系中〜高角度の節理

 観音滝は、江の川の支流鹿賀谷川にあり、落差が約40m、平均斜度50度の比較的なだらかな滝です(写真1)。この滝の頂部付近には二段の棚があり、それぞれの棚には小規模な滝壺ができています。
 岩石中にほぼ等間隔で発達するズレを持たない小さな割れ目を節理と呼びます。この滝の斜面に見られる節理は、方向別に3系統に分けられます(写真2)。そのうち、北東―南西系の節理と北西―南東系の節理は、鹿賀谷川の全流域とその周辺に広く見られ、谷川はこの2系統の節理に沿ってほぼ直角に細かく屈曲しています。


 割れ目の中には、割れ目に沿ったずれの見られるものがあります(写真3、写真4)。このような割れ目は断層と呼ばれ、観音滝では北東―南西系の小断層が多く見られます。さらに滝から下流約500mまでの間には、この系統の断層がきわめて狭い間隔で無数に発達しているので、小規模な断層帯があると考えられます。
写真3:滝壺付近の山斜面の断層 写真4:滝斜面上の平行した複数の断層

 観音滝の岩石は、緑色の安山岩の岩片を含む溶結した火山礫凝灰岩です(写真5)。この岩石中には、石英と長石の破片状の結晶が多数含まれ、また、長径5mm前後の黄灰色や淡褐色のレンズ状岩片がわずかに見られます。このレンズ状岩片は、火砕流に含まれていた軽石が赤熱した状態で押し潰され扁平になったものです。軽石は流紋岩〜デイサイトであり、安山岩の岩片はこれとは異質なものです。
 約3千万年前(古第三紀後期)に江津市桜江町一帯の大地は陥没し、激しい火山噴火が起きて、溶岩や火砕流などが厚く積み重なりました。これらの地層は桜江層群とよばれ、約3000mの厚さがあります。

写真5:安山岩の岩片を含む凝灰岩


アクセス

所在地:島根県江津市桜江町鹿賀
JR三江線鹿賀駅前の県道を西へ約500m行き、三差路を左折して約1.8km行くと駐車場があります。ここから約200m歩くと滝につきます。


関連する情報

江津市観光協会:http://www.gotsu-kanko.jp/02_meisyo/04_nanbu/kannon.html
島根県環境生活部自然環境課:http://www.pref.shimane.lg.jp/shizenkankyo/
小さな自然館:http://www.geocities.jp/small_nature/index.html


天然記念物などの指定情報

断魚渓観音滝県立自然公園
中国自然歩道「断魚渓千丈渓」の萩原山断魚渓モデルコースの一部


地質学的な意義

 川が下刻作用と側刻作用で谷の幅と深さを拡大させながら谷頭を侵食して、谷頭を後退させます。その過程で、滝が形成されるものと考えます。鹿賀谷川の発達の初期には、その谷頭は江の川との合流点付近にありましたが、断層に沿って川の浸食が進み、谷頭は現在の観音滝付近まで後退しました。しかし、ここから先には断層などの浸食されやすい割れ目がなかったため、谷頭侵食の速度が急減しました。しかし、下流側での下刻・側刻作用は進行して、上流側と下流側で大きな高低差が生じ、滝が作られたと考えます。
 滝にかぎらず、早瀬や淵、甌穴などは、流れが屈曲しているところ、幅広い岩脈や地質境界線が谷川を横断しているところ、川床に硬軟の違いがあるところなどに見られます。地形図や地質図をたよりに、滝や早瀬、淵などの位置をあらかじめ推測してから野外を歩くと、いろいろな発見に出会います

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