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木部谷温泉の間欠泉

鹿足郡吉賀町柿木村木部谷

島根県では唯一、日本でも数少ない希少なタイプの間欠泉を見ることができます。

  • 赤丸:木部谷温泉の間欠泉
  • 矢印:写真3の撮影方向

キーワード:木部谷温泉 間欠泡沸泉 炭酸ガス 断層谷 アニオンインデックス


(執筆:加藤芳郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「安蔵寺山」より

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みどころ

写真1

写真1:木部谷の間歇泉(提供:渡辺勝美)

間欠泉とは周期的に蒸気や熱水を噴き上げる温泉のことです。木部谷では古くから裏山に湧く泉水を温泉として利用していましたが、1970年(昭和45年)に深度80mまでボーリングで掘削したところ、間欠泉が出現しました(写真1)。

間欠泉は、水の沸騰により高温の水と蒸気を間欠的に噴き上げる間欠沸騰泉と、水の沸点より低い温度で炭酸ガスの圧力によって噴出する間欠泡沸泉とに区分されています。いずれも内圧が高まって温泉が噴出し、しばらくそれが続くと圧力が低下し、地下水が流入して休止期間に入ると考えられています。間欠沸騰泉といえば米国イエローストーンのものが有名です。日本でもこのタイプは地熱地帯でみられます。しかし木部谷の間欠泉は極めて珍しい間欠泡沸泉で、日本でもあまりありません。もちろん島根県では唯一の間欠泉です。ここの間欠泉は5分間噴出すると30分休止する規則的な周期をもっています。湯温は21度で、毎分200リットルの泉水が高さ1.5mほどに噴き出します(写真2)。

温泉とは、地中から湧出する温水・鉱水・水蒸気等で、摂氏25度以上の温度または法に定める19の特定の成分(溶存物質、リチウムイオン、フッ素イオン、水素イオンなど)が一つ以上規定値に達しているものとされています。木部谷温泉の泉質は含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(旧泉質名では含炭酸土類重曹食塩泉)で、噴出したときは透明ですが、鉄分を多く含むため空気に触れると酸化して茶色く変色します。

写真2

写真2:噴き出しの様子(提供:渡辺勝美)


アクセス

益田市より国道9号〜国道187号を利用して約42km、または中国道六日市ICより国道187号を利用して約15km。木部谷温泉「松之湯」。


関連する情報

しまねの自然:http://www.geocities.jp/naka680229/shimane100/kibedani.html

吉賀町役場:http://www.town.yoshika.lg.jp/kankou/index.html


天然記念物などの指定情報

なし


地質学的な意義

木部谷間欠泉の噴出周期は1979年の約21分、1998年の約28分、2000年の約30分と、1周期の時間が長くなってきているそうです。これは炭酸ガスの供給量の減少のためと考えられています。この間欠泉は深度約10m以深から供給される温泉水と炭酸ガスからなっており、深度約10m付近で地下水が流入していると考えられています(関東学院大学、http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~kg044001/yano/ による)。

温泉水中の主要陰イオン(SO42−、Cl−、HCO3−)濃度から求められるアニオンインデックス(AI)は、地熱活動の中心部への近接度を表す指標として有効とされています。県南西部に点在する温泉のAI値は0.1〜0.4の範囲にあるそうで、熱源からは遠い存在の温泉といえそうです。木部谷温泉はこの地域に特徴的に発達する北東−南西方向の断層にそって形成された断層谷に位置します(写真3)。地下にある断層をとおしてたくさんの炭酸ガスが溶け込んだ地下水が供給されていると考えられます。

写真2

写真3:白丸が木部谷温泉の位置。断層は左側山裾から正面の鞍部に至る。

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