隠岐地方のジオサイト

国賀海岸

島根県隠岐島前の西ノ島町の北西海岸

約10kmにわたって海食崖や海食洞が連続し、奇岩も数多く見られる景勝地です。


キーワード:島前火山 外輪山 粗面玄武岩 海食崖 中新世


(執筆:村上 久)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「浦郷」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

全景

写真1:国賀南の町道から国賀海岸を望む(写真提供:西ノ島町)

全景

隠岐島前は西ノ島、中ノ島および知夫里(ちぶり)島の3つの有人島と多くの小島からなります。これらの島々は焼火山(たくひやま)を中央火口丘として、それを取り囲む山々と知夫里島、中ノ島を外輪山とするひとつの大きなカルデラ火山と考えられており、島前火山と呼ばれています。ただし,島前火山が活動したのは約630〜530万年前で、現在ではその大部分は海面下にあります。 西ノ島町北西部の国賀海岸は、約10kmにわたって海食崖や海食洞が連続し、奇岩も数多く見られる景勝地です(写真1)。焼火山を除く西ノ島の山々は島前火山の外輪山を構成しています。国賀を含む外輪山はアルカリ成分を多く含んだ塩基性〜中性の火山岩である粗面玄武岩〜粗面安山岩の火砕岩や溶岩からなっています。


アクセス

自家用車あるいはレンタカーを利用する場合は、別府港から浦郷経由で約15分。駐車場あり。

町営バスは別府、船越、浦郷から乗車、国賀下車(3月1日〜12月15日)。

別府港と浦郷港から定期観光船・定期観光バスが運行(3月21日〜11月20日)。

観光タクシーも利用可。


関連する情報

千葉とき子・金子信行・鹿野和彦(2000),浦郷地域の地質(5万分の1地質図幅「浦郷」).地質調査所

西ノ島町役場: http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園特別保護区、1935,国指定,名勝および天然記念物 「日本列島ジオサイト地質百選」に「隠岐島前カルデラ」として選定されている。


地質学的な意義

写真

写真2:摩天崖を望む (写真提供:西ノ島町)

国賀海岸の摩天崖は粗面玄武岩〜玄武岩質粗面安山岩の溶岩が何層も積み重なったもので、浸食や岩盤の崩落・崩壊が進み、高さ約260mの断崖となっています。溶岩(アア溶岩)には著しく発泡したクリンカーと呼ばれる砕片状のものが上面に伴われますが、そのガサガサした部分は風化・浸食を受けやすいため凹状になり、それ以外の固い部分が突出して、薄い溶岩の積み重なりが確認できます(写真2)。また摩天崖の南西の海岸部には多くの波食洞が連続して形成されています(写真3)。通天橋はこの波食洞の奥の部分が崩落し、周辺が浸食されることにによってできた特異な地形です。ここでは何層も積み重なった粗面玄武岩〜玄武岩質粗面安山岩の溶岩が、一部赤色酸化を受け、そこに白っぽい粗面安山岩が地層に平行に貫入していて、独特の景観をつくっています(写真4)。また、周囲には浸食によってできた奇岩が数多くあります。付近の海岸や町道には、白っぽい色をした幅1〜2mの粗面岩〜流紋岩の岩脈が何本も見られますが、これは中央火口丘から放射状に伸びたもので、噴火の中心が焼火山にあったことをうかがわせるものです。また通天橋の板状の貫入岩もこの岩脈と同じようにしてできたものです。

写真

写真3:摩天崖の南西から通天橋にかけて見られる波食洞群

写真

写真4:通天橋を望む

[隠岐地方のジオサイト一覧へ | 島根ジオサイト百選へ]