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浜田市の黄長石霞石玄武岩

浜田市長浜町・熱田町・内田町一帯

日本ではここだけに産出する希少な玄武岩です。

  • 青星印:天然記念物に指定された3カ所の露頭
  • 赤丸印:名前が付けられた径5m以上の岩塊

キーワード:玄武岩溶岩 霞石 黄長石 溶岩台地 中新世


(執筆:桑田龍三・加藤芳郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「浜田」より

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みどころ

写真1

浜田市長浜町南部の標高120m前後の長浜台地には、黄長石霞石玄武岩(写真1)が溶岩台地を形成して分布します。この岩石はアルカリ玄武岩の一種で、ち密で黒色〜暗灰色をしています。主要な造岩鉱物は輝石とかんらん石ですが、そのほかに、黄長石と霞石とが含まれる非常に珍しい岩石です。日本ではここだけに産出する希少な岩石で、世界的にも希なものです。一般に、黄長石(メリライト)は蜜黄色をしています。霞石(ネフェリン)は白〜灰色の結晶で、貝殻状の断面、ガラス〜脂肪光沢をしています。しかし、この黄長石霞石玄武岩中では、ともに微細な結晶として含まれているので、肉眼で見分けることはできません。黄長石霞石玄武岩が噴出した時代は、今から約600万年前の新第三紀中新世後期です。

ここの玄武岩は、1909年(明治42年)に日本で初めて霞石を含んでいることが発見されたことにより、霞石玄武岩と命名されました。その後1949年(昭和24年)になって、さらにこの玄武岩の中に黄長石が入っていることが日本で初めて発見され、黄長石霞石玄武岩と呼ばれるようになりました。また、1947年(昭和22年)に沸石の晶洞に岩漿水が取り込まれていること、2007年(平成19年)には噴出した当時の海水がこの岩石の中に取り込まれていることが確認されました。

長浜町一帯では、黄長石霞石玄武岩の露頭のうち3ヶ所が島根県指定天然記念物となっています(現地に標柱が立っています)。天然記念物指定箇所以外にも、径5m以上の岩塊が16ヶ所、径2〜5mの岩塊が40ヶ所で確認されています。現在、地元の人達によってそのうちの30ヶ所に名前が付けられ、整備されて見学できるようになっています(写真2)。

写真2


アクセス

JR山陰本線西浜田駅からは、駅西側の道を南の丘陵に向かって約500m登ります。車の場合は、国道9号から浜田カントリークラブ(ゴルフ場)の案内に従って南に折れます。または、浜田商業高校前の浜田市熱田交差点から丘陵地帯に入ります。


関連する情報

浜田市文化振興課:http://www.city.hamada.shimane.jp/kankou/bunkazai/shitei/ken/12.html

浜田市役所本庁舎1階市民ロビーと浜田市世界こども美術館では、鉱物の顕微鏡拡大写真と岩石標本とを使った展示がされています。

浜田市役所:http://www.city.hamada.shimane.jp/

浜田市世界こども美術館:http://hamada-kodomo.art.coocan.jp/


天然記念物などの指定情報

島根県指定天然記念物(昭和41年5月31日)


地質学的な意義

玄武岩は地球表面の火山岩類の中でもっとも広くかつ多量に産出します。海洋底をつくっている岩石はほとんどが玄武岩です。玄武岩の化学組成や構成鉱物は、産出する場所、例えば、中央海嶺、ハワイ諸島のような海洋島、日本列島のようなプレートの沈み込み帯、東アフリカ大地溝帯などで異なっています。浜田の黄長石霞石玄武岩はアルカリ成分に富む玄武岩で、霞石を含む火山岩は東アフリカ大地溝帯では産出が珍しくありませんが、沈み込み帯の火山岩ではきわめて希です。一般的にはマントルからわき上がるプルームまたはホットスポット起源の火山です。アルカリ玄武岩は山陰地域や北九州のように日本海側に特徴的に分布する傾向があり、島根県内でも各地で小規模な岩体として分布しています。

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