[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義] みどころ写真1 海苔田ノ鼻 隠岐諸島島後の北端に近い隠岐の島町下元屋地区の北東の海岸から北東に突き出した半島は「海苔(のり)田(だ)ノ鼻(はな)」とよばれています.海苔田ノ鼻を遠望すると,一番最初に目に入るのは半島根元の暗灰色で見事な柱状の割れ目が発達した岩壁でしょう.この岩壁は三水(さみず)崖(だき)とよばれ,玄武岩の溶岩でできております.岩壁の割れ目は溶岩が冷え固まるときにできたもので,六角柱状に割れており,これを柱状節理といいます. 元屋(がんや)川河口から,遊歩道が整備されており,これをたどっていけば半島の先まで行けます.遊歩道を入ってしばらく進むと,先ほどの岩壁の麓にさしかかった途端,突然,目の前に岩塊がごろごろと積み重なった驚くべき風景が我々を迎えてくれます.玄武岩の岩塊は風化がすすみ割れやすくなっており,柱状節理に沿って崩れ落ちてきたものです.ここで玄武岩を間近に観察することができます.また,雨のあとなど岩壁の上から滝がみられることがあり,三水の滝と呼ばれています. 写真2 玄武岩溶岩の岩壁と三水の滝(野辺一寛氏提供) 遊歩道を半島先端付近までいくと,粗面岩と呼ばれるアルカリ成分を多く含む火山岩の上に見事な放射状に割れ目(節理)の発達した玄武岩がみられます.この岩はその鎧(よろい)のような形から鎧(よろい)岩(いわ)と呼ばれています.鎧岩のすぐ近くに兜(かぶと)岩(いわ)と呼ばれる同様に節理の発達した玄武岩がありますが,残念ながら陸上からは見えにくい位置にあり,こちらは船からの観察となります.鎧岩,兜岩を含む半島先端部は国の天然記念物に指定され,大山隠岐国立公園の特別保護地区にも指定されているので,ハンマーを入れることも石ころを採集することもできませんので注意してください. この遊歩道は過去に災害で崩れたこともあり,途中落石等の危険もあるため注意が必要です. 遊歩道を利用せず,礫のごろごろした海岸線を半島沿いにいくと,鎧岩まではたどり着けませんが,600mほど行きますと,海岸に緑色〜褐色の礫が沢山落ちているのが見えます.これらの表面をよくみると,貝や木の葉の化石をもった礫がみつかります.これらの礫はそばの岩盤から落ちてきたものです.岩盤は約2000万年前(中新世)に堆積した郡(こおり)層(そう)と呼ばれる地層で,島後各地に分布し,ヒメタニシやドブガイなど淡水棲の貝化石や木の葉の化石などがよくみつかっております. 写真3 ヒメタニシの化石 アクセス隠岐の島町西郷港より自家用車で約30分 関連する情報隠岐の島町ホームページ: http://www.town.okinoshima.shimane.jp/ 天然記念物などの指定情報
写真4 海苔田ノ鼻で行われた化石採集の様子 地質学的な意義細粒の凝灰質砂岩や細粒砂岩からなる郡層中に約550万年前(前期鮮新世)に粗面岩が貫入し,その両方の上に約250万年前(後期鮮新世)に噴出した玄武岩溶岩が不整合に重なっております. 郡層と同じ時代に,同じように火山噴出物を多く含み,湖や陸上に堆積した地層は,石川県能登半島から島根県江津市までの日本海沿岸地域に広く分布します.しかし,郡層の中に一時期海底に堆積した地層がみつかっており,すでに近くまで海が広がっていたようです. 岩壁を作っている溶岩はかんらん石玄武岩で,長さ4〜5cm程度もあるカンラン岩を含んでおります.この玄武岩は地下40キロメートル以上のマントルから上がってきたと考えられており,マグマが発生したときにマントルを構成するカンラン岩が溶け残ったものと考えられます.鎧岩自体も岩壁と同じ玄武岩と考えられます. 写真5 鎧岩 黒い部分は玄武岩,下位の岩盤は粗面岩です. |