[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義] みどころ隠岐島後島北東部の葛尾山付近を中心とする半径およそ8 kmのほぼ円形の地域には、隠岐片麻岩類(または隠岐変成岩類)とよばれる変成岩が分布しています。隠岐片麻岩類の分布地域には、泥質片麻岩、ミグマタイト質片麻岩、片麻状花崗岩、角閃岩のほか少量の石灰質片麻岩と珪質片麻岩をみることができます。泥質片麻岩はもともとは海底にたまった泥質(一部は砂質)の堆積物ですが、これが固まって泥岩となった後、地下に押し込められて高温の状態となり(隠岐変成岩類ではおよそ摂氏800度),粗粒の結晶からなる変成岩となったものです。この泥質片麻岩は石英や長石類からなる白っぽい部分と黒雲母が多い黒っぽい部分が縞状になっているのが特徴です(写真1)。泥岩が地下深くに押し込められてしだいに高温になり、摂氏650度から700度になると、その一部が融け始めます。このようにして、岩石が融けたものをマグマといいます。このマグマが地表に向かってあまり上昇せず、近くで固まると花崗岩になります。泥質片麻岩とその一部が融けてできた花崗岩質岩が混ざりあってできた岩石をミグマタイトまたはミグマタイト質片麻岩といいます。 西郷北方,有木川の上流部には泥質片麻岩やミグマタイト質片麻岩が広く分布します。地形図の(1)付近の林道の切り割り(写真2)にはミグマタイト質片麻岩(写真3)と泥質片麻岩を見ることができます。これらの片麻岩中には最大で直径5 mmぐらいの赤い粒状のざくろ石(ガーネット)の結晶が含まれていることがあります。林道沿いの崖は風化が進んでいますので、内部の新鮮な部分の観察をするには表面をハンマーで割って見る必要があります。この付近の有木川の河床では、水流によって磨かれた各種片麻岩を観察することができますが、河床に降りるときや河床では足を滑らさないよう細心の注意が必要です。(1)の地点のおよそ500 m下流には砂防ダムがあります(地点(2))。この砂防ダムの基底付近には、かつて(ダムの建造される前)、ミグマタイト質片麻岩の中に角閃岩がレンズ状に挟まれている様子が見られました(写真4)。現在はこの露頭の一部しかみることができませんが、林道からダムに沿って河床に降りると、黒っぽい柱状の角閃石が集まってできた角閃岩がミグマタイト質片麻岩中にあるのが見られます。ただし、林道から急斜面を20 mほど降りる必要がありますので、装備のない場合は露頭にまで行くことはできません。
アクセス島根県隠岐郡隠岐の島町有木 関連する情報なし 天然記念物などの指定情報なし 地質学的な意義 地点(1)付近の隠岐片麻岩には紅柱石や珪線石(いずれも化学組成はAl2SiO5)のような低圧・高温条件(変成作用がおこるときの地下の地温勾配が高い状態)での変成作用を受けています。この変成作用は今からおよそ2億5千万年前におこったことがわかっています。隠岐片麻岩類を形成した変成作用は,主に新潟県西部〜富山県〜岐阜県北部の地域に分布する飛騨変成岩の変成作用と大変よく似ていて、もともとは一続きの変成帯であったと考えられています。 |