[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義] みどころ写真1:鬼岩を下から望む。急崖表面にタフォニと呼ばれる空洞がいくつもあいている。 鬼岩は新第三系中新統久利層の粗粒凝灰岩〜火山礫凝灰岩で構成される急崖です(写真1)。急崖表面に形成された窪みは『タフォニ』と呼ばれる風化微地形です。これは岩石中を通過してきた塩類を溶かし込んだ水分が岩石表面で蒸発し、塩の結晶として晶出する際の応力によって岩石表面が分解、細片化する風化作用(塩類風化)によって形成されるといわれています。この風化作用が露岩の局所的な部分でのみ進行した結果、周囲に比べて局所的に窪んだ微地形が形成されると考えられています。
この地域の伝説では、この岩は昔、近くの山に住む鬼が城を造るために岩をつかんで運び、積み上げたものであるとされており、急崖表面にあるいくつもの窪みは鬼がつかんだ5つの指の跡であると言われています(写真2)。この奇岩は鬼村のシンボル的存在であり、鬼村の地名の由来もこの岩からきています。 アクセス大田市市街地西の国道9号線から南に約3kmに位置しています。車なら大田市街地から15分程度で鬼岩の前まで行くことができます。鬼岩の前には駐車場も整備されています。 関連する情報鬼岩から南に7-8kmほど行くと石見銀山遺跡に着きます。 天然記念物などの指定情報島根県指定天然記念物 『鬼村の鬼岩』 地質学的な意義鬼岩を含め、石見地方ではタフォニの形成された奇岩、急崖の存在が数多く認められています。大田市川合町忍原の観音岩とそのほかの奇岩群、大田市温泉津町にある龍御前神社の龍岩、大田市温泉津町福光にある福光小学校の裏の巨大タフォニなど、この他にもいくつも報告例があります。その理由のひとつとして、世界遺産に登録された石見銀山の銀鉱床の形成とも関係のある鮮新世〜更新世の熱水活動が大きく関わっていると考えられます。大田地域の新第三系の岩石は大江高山火山群に関連した熱水活動によって広域にわたって変質を受けています。この熱水活動によってできた鉱床も多く(石見銀山もそのひとつ)、その影響下にあった新第三系の岩石にも初性的に塩類風化の原因物質が多く含まれていると考えられます。実際、鬼村付近には石膏が採掘されていた鬼村鉱山(現在は閉山)があり、鬼村のタフォニの表面には石膏や沸石などの塩類風化に関わる塩類の析出が確認されています(写真3)。このようなことから、この地域一帯がタフォニの形成されやすい地質的要因があったことを物語っています。 鬼岩を含めた石見地域近辺に数多くみられるタフォニによる奇岩・急崖は、石見銀山の銀鉱床を生成した熱水活動の副産物として、現在まで受け継がれ、見事な景勝地を生み出しています。 |