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鷺(さぎ)銅山〜大歳(おおとし)鉱山

出雲市大社町〜河下町


キーワード:成相寺層 鵜鷺コミュニティーセンター 黒鉱 ずり 中新世

(執筆:大平寛人)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「日御碕」より

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みどころ

写真1

出雲市大社町鷺浦〜十六島(うっぷるい)湾にかけていくつかの鉱山跡があります。これらは海底火山活動にともなう熱水の噴出によって形成された黒鉱(くろこう)と呼ばれるタイプの鉱床で、かつて石膏や銅・銀・鉛・亜鉛を産出した鉱山の跡がわずかに残されています。

鷺銅山跡は道路沿いのうっそうとした杉林のなかに、竪坑(たてこう)の坑口など、往時の痕跡がごくわずかに残されているのみです(写真1)。鵜峠鉱山跡は管理上の問題があり現在立ち入ることはできませんが、 鵜鷺コミュニティーセンターには鵜峠鉱山で実際に使われていた鉱山用具や坑道図面、鉱物標本などが保存・展示されています(写真2)。大歳鉱山には豊富な「ずり」(鉱石を採掘したあとのいらない岩石)とコンクリート製の貯鉱場跡などが残されています(写真3、4)。

写真2, 3, 4


アクセス

鷺銅山跡:出雲市大社町鷺浦漁港から南(出雲大社方面)へ約1km

大歳鉱山跡:出雲市河下町十六島湾河下港から海岸沿いに約1km西方。

鵜鷺コミュニティーセンター:出雲市大社町鷺浦の鷺浦(さぎうら)漁港から東へ約1km。鵜鷺中学校跡。


関連する情報

鹿野和彦・竹内圭史・大嶋和雄・豊 遙秋(1989)大社地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所.58p.

島根県地質図説明書編集委員会(1985)島根県の地質.島根県.646p


天然記念物などの指定情報

なし


地質学的な意義

この地域には鰐淵、鵜峠、唐川(からかわ)などの鉱山群があり、昭和30年代半ばにはわが国最大の産出量を誇る石膏鉱床群とされていました。古くは石見銀山同様、灰吹き法による銀精錬が行われた歴史ある鉱山もあります(鷺銅山)。鉱石は島根半島に広く分布する中期中新世(今からおよそ1500万年前)の成相寺(じょうそうじ)層や牛(うし)切(きり)層とよばれる地層に含まれています。鷺銅山は室町時代にはすでに開発され、明治5年(1872年)(精錬高116t(銀))および明治33年(1900年)(精錬高69t)に採掘のピークがあったとされます。鵜峠鉱山は1868年(明治元年)から銅を採掘しましたが1932年(昭和7年)頃には石膏を採掘し、1970年(昭和45年)に閉山しました。

大歳鉱山からは十六島湾を挟んで対岸の風力発電の風車を望むことができます(写真3)。この鉱山は1960年(昭和35年)に発見されて以降、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱などを採掘しました。尾根を隔てて南側には石膏で有名な鰐淵鉱山があり、大歳鉱山はその支山という位置づけでした。この地域では唯一、「ずり」が豊富に残されている鉱山跡ですが、山の斜面にあり危険ですので、立ち入る場合は細心の注意が必要です。まれに閃亜鉛鉱や方鉛鉱などの重量感のある鉱石を採取することができますが、細粒・塊状のため肉眼で結晶の形を確認することはできません。また紫外線ランプで黄色や赤色に光る(蛍光)方解石も採取することができます。雑木林のなかには当時の貯鉱施設の跡が残されていて、稼働当時の面影をしのぶことができます(写真4)。

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