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三瓶火山軽石流堆積物層中の泥岩脈

大田市大田町高禅寺地内

 三瓶火山より約20kmの下流に位置するJR大田市駅周辺の駐車場沿いの崖面には、約4,5万年前に同火山から噴出し、延々と流下堆積した軽石流堆積物が露出しています。


キーワード:三瓶火山 軽石流堆積物 泥岩脈 河川成堆積物 更新世


(執筆:月森勝博)


国土地理院発行1:25000地形図「石見大田」「大浦」より

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みどころ

写真1:軽石流堆積物層中に分布する泥岩脈。崖面に直交したり、斜交するものなど衝立上に種々あり規則性は認められない。

 三瓶火山より約20kmの下流に位置するJR大田市駅周辺の駐車場沿いの崖面には、約4,5万年前に同火山から噴出し、延々と流下堆積した軽石流堆積物が露出しています(推定層厚30〜40m)。この堆積物中には、写真1に示すように、幅0.3〜0.5m程度の泥岩が脈状に貫入しています。軽石流堆積物層直下の谷底堆積物や河川成堆積物中の粘性土が、軽石流堆積物の堆積後の地震や冷却作用によって発生した亀裂を通って、地表まで貫入したものではないかと考えられています。亀裂幅を約40cmも押し広げる水平力を有する自然の力には大変驚かされます。
図1.軽石流堆積物の分布域(黒色部)と泥岩脈露出地点       
 群盲がなでた島根・三瓶火山(H20.8 松井整司)より


アクセス

 大田市大田町高禅寺地内の国道9号線沿い山側の崖面、JR大田市駅から徒歩5分


関連する情報

 大田市産業振興部、TEL 0854-82-1600


天然記念物などの指定情報

 指定なし


地質学的な意義

写真2:青果市場裏の露頭 写真3:ここでの泥岩脈は細粒土からなる

 今では道路改良工事でコンクリートに覆われ、見られなくなった箇所があるものの(図2の×箇所)、大田市駅周辺部ではよく見られます(図2の○箇所)。
泥岩脈の成因については、その脈の新鮮部の色合いによって下記のように考えられています。
1) 泥岩脈が青灰色を示すもの
 図2の三瓶川沿いの×箇所で泥岩脈の根もとまで見られました。(今は見られません。)河川成の砂礫層中に含まれる粘土質の軟らかい土層が、軽石層の冷却作用によって発生した微細な亀裂面に圧入し亀裂面を押し広げ地表まで貫入したものと考えられます。
2)泥岩脈が茶褐色を示すもの
 図2の大田市駅近くの青果市場駐車場でよく見られますが、いずれも茶褐色を呈しており(写真2)、細粒土がほとんどですが(写真3)、一部細かな軽石を含んでいます。ここでは根元は見られませんので、旧河成層(現在は周囲に河道は位置していません)中の軟質な粘性土層が上位の軽石流の底面部を取り込んで亀裂面に圧入したもの、またはこの軽石流より前の火砕流堆積物が同じく亀裂面に圧入したものではないかと考えられます。

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