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須々海海岸

松江市島根町大芦

砂岩と泥岩が差別的に侵食されることによってできたたいへん美しい地形と、1,400万年前にできた深海の地層を観察することができます。


キーワード:牛切層 タービダイト 洗濯岩 海底地すべり 中新世


(執筆:酒井哲弥)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「加賀」より

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みどころ

写真1

この海岸に沿って走る県道からは海岸の全景をみることができます。海岸に広がる海食台には、黒い層と白い層の繰り返しがみごとなコントラストを作り出しています(写真1)。須々海海岸の西の道路あるいは東にある降り口(かなり急な道なので県道から海岸へおりるときはくれぐれも注意のこと)から海岸へおりてみましょう。このコントラストは見事なほどの地形の凹凸によって作り出されていることがわかります(写真2)。出っ張っているのは白い色をした砂岩層で、へこんでいるのは黒い色をした泥岩層です。地層は北へむかってゆるく傾いています。この凹凸が繰り返す地形は、かつてはよく目にした洗濯板に形が似ていることから、洗濯岩(または鬼の洗濯岩)と呼ばれています。その最も有名なものは宮崎県青島の「鬼の洗濯岩」です。宮崎県のものは、非常に広い範囲にこの洗濯岩が広がりますが、この須々海海岸の洗濯岩も、宮崎県の洗濯岩に全く見劣りしないものです。

泥岩がへこみ、砂岩が出っ張るのは、泥岩が優先的に壊されていることによります。砂岩と泥岩の様子を詳しく観察してみましょう。泥岩の表面にはチップのような割れ目がたくさん見られます。一方で、砂岩の表面は滑らかです。泥岩の方が砂岩に比べて、より岩石の破壊が進んでいることがわかります。

この地形自体は、過去およそ6千年程度の間にできたと推定されますが、地層そのものは、はるか昔のおよそ1,400万年前にできたものです。この地層には深い海に棲んでいたとされる貝の化石が含まれています。また、所々に、層が折り曲げられたり、引きちぎられたような跡が見られる部分もあります。これは、地層がたまっていた時に起きた海底の地すべりの跡です。

今の海岸で地層が傾いているのは、地層がたまったあと、島根半島が隆起をしたことと関係していると考えられます。すなわち、1,400万年もの長い時間をかけ、大地に大きな力が作用することで、深い海でたまった地層が地表に持ち上げられ、それがさまざまな侵食作用を受けたことで、このような洗濯岩ができたわけです。

写真2


アクセス

JR松江駅よりマリンゲート行きバスに乗車、マリンゲート下車(およそ40分)、そこから県道37号線を西へ1.5km 徒歩約25分。

自家用車利用の場合、松江市内より国道485号線から県道21号線を経由し、マリンゲートそばの交差点を右折、県道37号線を西におよそ1.5km 所用時間約30分


関連する情報

特になし


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園


地質学的な意義

写真3

この洗濯岩をつくっている砂岩は、深海で発生した濁り水の流れ(混濁流といいます)や土石流から堆積したものです。層の中にはさまざまな流れの情報が記録されています。海岸の東端に近い海食台で、砂岩層の裏側をのぞいてみましょう。すると、層の底にだんご状のまるいものがたくさんついている様子が確認できます。これはソールマークと呼ばれるもので、砂岩層の砂粒を運んだ流れが、海底につけた傷跡を砂が埋めることによって作られたものです。また砂岩層の中には、上位に向かって堆積物の粒径が小さくなる級化層理、その上位に重なる平行層理が見られます(写真3)。これは濁り水の流れ(混濁流)からの堆積物に典型的に見られる特徴で、こうした特徴をもった岩石をタービダイトと呼んでいます。一方で、やや黒みがかった色をして、礫が中に散らばっている砂岩層も海岸の西側でよく見られます。これは海底での土石流からの堆積物です。この海岸ではさらに海底地すべり堆積物など、さまざまなタイプの堆積物を見ることができます。

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