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立久恵峡(たちくえきょう)

島根県出雲市乙立町立久恵

四季折々の風景を見せる名勝・立久恵峡は、太古の火山活動による噴出物からできています。


キーワード:大森層 安山岩 デイサイト 浸食地形 中新世


(執筆:大坂 理)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「神西湖」より

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みどころ

写真1

写真1:立久恵峡の峡谷を形成する岸壁

立久恵峡は島根県出雲市の南部、神戸川上流の2kmにわたる峡谷です。安山岩やデイサイト溶岩が、長い間の浸食作用によって険しいV字谷を形成し、山の斜面には絶壁や奇岩が多数存在します。ここの溶岩には、塊状のものと礫状のものがあります。礫状の溶岩は熱い溶岩が水に接して礫状になった水冷自破砕溶岩です。

出雲市南部には新第三紀中新世大森層の安山岩やデイサイト溶岩がたくさん噴出しました。溶岩は冷え固まるときに割れ目ができるので、その割れ目に沿って風化・浸食されやすくなります。この風化・浸食作用によって景勝立久恵峡は生み出され、清流神戸川とともに四季折々の豊かな表情を現します。

また、動植物の宝庫としても知られ、この地域でしか見られない固有の植物も観察できます。

 なお、立久恵峡の名前の由来は、杭を立てたような岩が並んでいるところから立杭と呼ばれ、後に立久恵峡となったと言われています。

写真2

写真2:神戸川とそれに架かる不老橋


アクセス

出雲市内から国道184号を南へ約12km、車で約15分の乙立町の入り口。


関連する情報

島根県自然環境課:http://www.pref.shimane.lg.jp/shizenkankyo/

出雲観光協会:http://www.izumo-kankou.gr.jp/index.html


天然記念物などの指定情報

国指定の名勝天然記念物、島根県立自然公園指定


地質学的な意義

名勝立久恵峡は、中新世の大森層の安山岩ないしデイサイト溶岩及び同質火砕岩が浸食されてできた神戸川中流の渓谷です。

大森層は1450万年〜1400万年前に形成された地層です。下位の久利層、川合層などを不整合に覆う地層で、島根半島部の牛切層に対比されます。牛切層には砂岩泥質岩互層(タービダイト層)などの堆積岩が含まれ半深海性の堆積環境であるのに対し、大森層は、陸上で噴火した安山岩やそれに由来する砕屑岩からなり、陸域に近い浅海で形成されたと考えられています。

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