隠岐地方のジオサイト

島前火山中央火口丘(焼火山)

島根県隠岐郡西ノ島町

  1. 溶結凝灰岩露頭
  2. 焼火神社駐車場
  3. 社務所の石垣
  4. 焼火神社
  5. 美田ダムで観察される美田層
  6. 石英閃長岩の露頭
  7. ホルンフェルスの露頭
  8. 市部層の貝化石が観察できる露頭

注)赤い破線が伏在する火口壁

キーワード:島前火山 中央火口丘 粗面岩 溶結凝灰岩 中新世

(執筆:村上 久)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「浦郷」「菱浦」「崎」「知夫」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

写真1

図1

島前は焼火山(写真1)を中央火口丘として、それを取り囲む山々と知夫里島、中ノ島(海士町)を外輪山とする約630〜530万年前のカルデラ火山と考えられています。この中央火口丘は、粗面岩(主にアルカリ成分を多く含む中性の火山岩)の火砕岩類からなる火砕丘で、その多くが溶結凝灰岩で出来ています。溶結凝灰岩とは一度火山の爆発で破砕されたマグマの岩片が、堆積後自分の持っている熱で再び溶けて固まったもので、黒っぽいガラスの中に、結晶片や岩片、溶けた軽石片を混じるのが特徴で(写真2)、林道沿いの地点1の露頭から焼火山駐車場(地点2)に至る林道で観察できます。また、駐車場から15分ほど山頂目がけて歩くと焼火神社(地点4)に至ります。この神社はオーバーハングした非溶結の火砕岩中の洞穴に造られており、独特の景観を持っています(写真3)。また、神社社務所の石垣(地点3)は溶結凝灰岩で出来ており詳細な観察が可能です。火砕丘の北側には島前火山の基盤をなす美田層と呼ばれる1900万年前の湖に堆積した地層(地点5)や、1200万年前に海に堆積し、貝化石を含む市部層と呼ばれる砂岩層(地点8)が観察できます。林道の大山側では、これらの地層を貫く、日本では珍しいアルカリ岩の深成岩である石英閃長岩(地点6)と、接触変成作用を受けてホルンフェルス化した美田層(地点7)を観察することができます。

写真2, 3


アクセス

自家用車あるいはレンタカーやタクシーを利用する場合は、別府港から波止経由で駐車場まで約20分。


関連する情報

千葉とき子・金子信行・鹿野和彦(2000),浦郷地域の地質(5万分の1地質図幅「浦郷」).地質調査所

西ノ島町役場: http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園、1992

国指定重要文化財(建第二二七二号)

「日本列島ジオサイト地質百選」に「隠岐島前カルデラ」として選定されている。


地質学的な意義

焼火山の北側では島前で最も古い地層や珍しい閃長岩(写真4)を観察することができ、島前地域の地史を理解することが出来ます。伏在する火口壁の内側は同心円状に地層が内側に20~90°傾斜し、外側では逆に外側に40~80°傾斜しており、火山体の構造が読み取れます。また、平行〜斜交層理の発達したマグマ水蒸気爆発を起源とする火砕サージ堆積物など、火山噴出物の多様な現象を観察することができます。 

写真4

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