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青野山と笹山の湧水

鹿足郡津和野町笹山・耕田

青野山とその周辺の溶岩ドームを右の地図に示します。

  1. 青野山
  2. 小青野山
  3. 弁天山
  4. 枯木山
  5. 竜帽子山

赤丸は地下水が湧き出している箇所です。

キーワード:青野火山群 溶岩ドーム 湧水 山体崩壊 更新世


(執筆: 加藤芳郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「津和野」より

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みどころ

写真1

青野山(標高907.6m)は約10万年前に噴火した溶岩ドームで、一度の活動で形成された単成火山です。溶岩ドームとは、安山岩やデイサイトのように粘性のあるマグマがゆっくりと火道を上昇し、溶岩が火口から押し出されるように内側から膨張して成長した火山です。火山をつくった溶岩は、角閃石という長柱状の黒色の鉱物が目立つ角閃石安山岩です。南麓にある元笹山集落ぐらいの高さから上の方が火山体となり、その体積は1.03km3とされています。

元笹山集落からは、お椀を伏せたような美しい姿の青野山を仰ぎ見ることができます(写真1)。南側の開けた土地は火山活動によってできたせき止め湖の跡です。火山活動で流れ出した溶岩が当時の南谷川をせき止めました。そこにつくられたせき止め湖は、周辺の山々から流れ込む土砂で少しずつ埋め立てられ、やがて平地となって人々が農耕地に開拓しました。さらに東方の木野と沼原(のんばら)という小さな集落も、せき止め湖の跡にあります。

火山山麓地では地下水の湧き出しがよく見られます。元笹山集落の北側斜面からも多量の湧水が生じています。湧き出た水はプール状の施設にいったん溜められ(写真2)、生活に利用されています。

青野山の北側山頂近くの斜面は大きく凹み、山体崩壊の跡がはっきり見てとれます(写真3)。麓耕(ろくごう)の集落は崩壊地から流れ出した土砂が堆積した緩斜面に開けています。

写真2,3


アクセス

国道9号より県道柿木津和野停車場線に入り約3kmで笹山登山口。または、JR山口線青野山駅より約4kmで青野がわら登山口。山頂への登山道はいずれも整備されています。


関連する情報

島根県環境生活部自然環境課:http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/shimane/shimane_kouen/

オープンエア・ミュージアム山口の火山:http://volcano.instr.yamaguchi-u.ac.jp/aono1.html


天然記念物などの指定情報

青野山県立自然公園


地質学的な意義

青野山の近くには、小青野山(684m)、地倉山(622m)、弁天山(450m)、枯木山(560m)、竜帽子山(534m)、野坂山(640m)などの溶岩ドームからなる火山があります。島根県南西部から山口県にかけては、これらも含めて20以上の火山が北東−南西方向に4列に分かれて配列しており、総称して青野火山群と呼んでいます。火山群の活動時期は約128万年前から10万年前頃までとされています。青野山のように均整のとれた形状が残っている火山がある一方で、竜帽子山などの津和野川右岸の山々では、山体の半分以上が開析されています。

青野火山群を作っている安山岩やデイサイトは、アダカイトと呼ばれる特殊な岩石です。中国地方の下に沈み込んでいるフィリピン海プレートそのものが、部分溶融して上昇してきたものと考えられています。

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