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蟠竜湖(ばんりゅうこ)と砂丘

益田市高津町

蟠竜湖は,海岸からの飛砂がたまってできた砂丘が,谷の出口を塞いだことによってできた堰止(せきと)め湖です.

  1. 蟠竜湖駐車場
  2. 写真2の露頭(×)
  3. 万葉公園内の「子供の広場」
  4. 万葉公園内の「人麻呂展望広場」と間歩の呑み口(○)

※着色範囲:砂丘の範囲
※平成19年開通の益田道路を長破線で追記しています.

キーワード:せき止め湖 新砂丘 蟠竜湖疎水 都野津層 周防変成岩


(推薦:寺戸久雄さん)
(執筆:加藤芳郎)


国土地理院発行1:25000地形図「益田」より

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みどころ

写真1:蟠竜湖

 益田市街地西方の郊外には,標高50〜60mの丘陵地が広がっています.この丘陵地を削り込んだ谷筋を埋めるように,豊かな水を湛えた蟠竜湖があります(写真1).湖の面積は13haで最大水深は10m程度といわれ,湖岸線は複雑に屈曲し変化に富んだ景観を見せています.龍が蟠(わだかま)っている(とぐろを巻く,複雑に絡み合っている)ような湖岸の形状から,蟠竜湖と名付けられたそうです.西側の上湖と東側の下湖の二つの湖が並んでおり,それらをつなぐように周回できる散策道が整備されています.
 蟠竜湖は,海岸からの飛砂(写真2)がたまってできた砂丘が,谷の出口を塞いだことによってできた堰止(せきと)め湖です.その砂丘は,蟠竜湖西側の萩・石見空港に行く県道付近から,旧益田競馬場や高等学校,中学校を経て高津川左岸付近までの2km以上にわたって,幅500mほどで海岸線とわずかに斜行するように連なっています.万葉公園内の「子供の広場」からは,砂丘の様子を展望することができます(写真3).



写真2:砂丘砂



写真3:「子供の広場」からみた砂丘
(手前は益田道路)
 下湖の奥まった北側湖岸から,丘陵をくり貫いて写真3の水田地帯に至る灌漑用の水路トンネルがあります.今は「蟠竜湖疎水」とよばれていますが,地元高津の庄屋であった長嶺嘉左衛門の手によって宝永4年(1707年)に完成した間歩(まぶ)です.それ以来,この地区が旱魃にみまわれたことはないそうです.間歩は両坑口付近を除いて幅0.45〜0.6m,高さ1.8〜3.6mの素掘りのトンネルで,全長は約200mです.写真4は蟠竜湖側の間歩の口の様子です.



写真4:間歩,蟠竜湖側の呑み口:


アクセス

益田市高津町
 国道191号の萩・石見空港入口交差点から県道蟠竜湖線に入り,約500mで県立自然公園蟠竜湖駐車場(無料)に着きます.
 駐車場手前の交差点を東に約400m進むと,万葉公園の入り口になります.公園内にも駐車場があります.
 蟠竜湖側の間歩の口へは,万葉公園内の「人麻呂展望広場」西隣の谷筋に沿った小径を湖の方に下ります.


関連する情報

・島根県環境生活部自然環境課
 http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/shimane/shimane_kouen/

・万葉公園指定管理者のHP
 http://ohata.jp/manyou/


天然記念物などの指定情報

 島根県立蟠竜湖自然公園
 島根県立万葉公園


地質学的な意義

 蟠竜湖を取り囲む丘陵地には,およそ2億年前頃となる中生代トリアス紀〜ジュラ紀の周防(すおう)変成岩と,今から約180万年前頃に堆積した都野津層とが分布します.都野津層は周防変成岩を覆って標高20m前後より高いところに分布していますので,蟠竜湖の湖岸には変成岩が露出しています.水路トンネルも全区間で変成岩を貫いています.蟠竜湖の集水域は湖よりわずかに大きいにすぎません.砂礫層からなる都野津層の保水機能と湖側に傾斜する基底形状が,湖の豊富な水量に寄与していると考えられています。
 砂丘を構成する細粒の砂丘砂は最大40mほどの厚さで堆積しています.砂丘の中央部付近では,砂丘砂が地表から標高-3m前後までほぼ均一な状態で続きます.それから標高-19m前後までは所々に貝殻片を混入する有機質シルト層(完新統),さらに砂礫層(更新統)が標高-30m前後まで続き,それより深いところに基盤岩となる周防変成岩が分布します.

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