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匹見川河床の鹿足(かのあし)層群

●最初の観察地点:益田市長沢町

長破線は平成21年度供用開始予定の長沢1号トンネル(仮称)

(1):秋冷橋 (2):写真2の露頭

●2番目の観察地点:鹿足郡津和野町商人

(3):写真3の露頭,(4):写真4の露頭

 島根県西部の益田市から津和野町にかけて,泥岩を主体として砂岩やチャート,石灰岩,緑色岩などを伴う堆積岩が広く分布しています.



キーワード:鹿足層群 メランジ 含礫泥岩 付加体 ジュラ紀


(執筆:加藤芳郎)


国土地理院発行1/25000地形図 「都茂郷」,「石谷」を使用


国土地理院発行1/25000地形図 「日原」を使用

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みどころ

写真1:露岩が連続する匹見川河床

 島根県西部の益田市から津和野町にかけて,泥岩を主体として砂岩やチャート,石灰岩,緑色岩などを伴う堆積岩が広く分布しています.鹿足層群と名付けられたこの地層は,今から1億数千万年前の中生代ジュラ紀の泥岩からなるメランジです.メランジとは基質の中に大小さまざまな規模の岩塊が含まれている岩相のことです.一緒に出現するチャートや石灰岩などは,径数10cm〜数kmの規模で取り込まれた岩塊です.元々は今から約2〜3億年前の古生代ペルム紀〜中生代トリアス紀に堆積した遠洋性〜半遠洋性堆積物です.

写真2:泥岩中の引き伸ばされた砂岩礫(地点2)

 最初の観察地点は,国道488号秋冷(しゅうれい)橋付近から匹見川上流方向へ約1kmの区間(写真1)です.ここの河床には,引き伸ばされたように変形した砂岩礫が泥岩中に含まれる含礫泥岩(泥質偽礫岩,混在岩ともいいます)が広く露出しています(写真2).北方に分布する真砂(まさご)花崗岩の影響で熱変成を受けてホルンフェルス化していますので,割れ口が鋭くなります.
 2番目の観測地点は津和野町商人(あきんど)です.商人川に沿った町道では,著しく片状化した泥岩,珪質泥岩,砂岩塊のとりこみ(写真3),さらには層状チャート(写真4)などの付加体のさまざまな様子が観察できます.また,国道から県道を800m入った対岸の露頭ではうねったような小褶曲構造が見られます(写真5).



写真3:砂岩塊の取り込み(地点3)


写真4:層状チャート(地点4)
 


写真5:小褶曲


アクセス

●最初の観察地点:益田市長沢町
→国道9号横田町交差点から国道488号に入り,約16km進むと秋冷橋に着きます.国道から河岸へは数ヶ所で降りられます.道路が狭いので車を止める場所に注意してください.また,降雨時には河川水位が急激に上昇するところですので,河床に降りるときには天候に注意してください.

●2番目の観察地点:鹿足郡津和野町商人
→国道9号曽庭から県道津和野須佐線に入り,程彼(ほどがん)で分かれて商人川に沿った町道を赤岩橋に至る約7.5kmの区間です.


関連する情報

鹿足層群は益田市から津和野町の地域に広く分布しています.匹見川筋,高津川〜津和野川筋の各所で,いろいろな様子を観察することができます.


天然記念物などの指定情報

なし


地質学的な意義

 鹿足層群は,海洋プレートが大陸近くで沈み込むときに,それに乗って運ばれてきた堆積物が大陸側に付加されてできた地質体です.これを付加体といいます.付加された堆積物は逆断層で積み重なる過程でぐしゃぐしゃに入り交じるため,異なった地質時代の岩石が一緒に出現することになります.
 付加体は日本列島の成長に大きく関係しています.日本そのものが付加体からできているとさえいわれます.コノドント,放散虫という微化石の研究をとおして,付加された地層の堆積環境や付加体の形成過程が解明されてきました.中・四国地方では日本海側に古い時代,太平洋側に新しい時代の付加体が帯状に分布しています.紀伊半島〜四国〜南九州に分布する四万十(しまんと)帯付加体が有名です.

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