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浄土ヶ浦と崎山岬

島根県隠岐郡隠岐の島町布施

浄土ヶ浦周辺の海岸には変成岩、火山岩、堆積岩など10種類以上の岩石が狭い範囲に分布しており、海岸は複雑に入り組み、変化に富んだ景観が作られております.

崎山岬の崖には約265万年前に噴出した厚さ10m程度の玄武岩溶岩がみられます。

キーワード:郡層 斜交層理 湖成層 火山豆石 中新世

(執筆:山内靖喜)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「布施」より

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みどころ

全景

写真1:浄土ヶ浦

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浄土ヶ浦周辺の海岸には変成岩、火山岩、堆積岩など10種類以上の岩石が狭い範囲に分布しており、海岸は複雑に入り組み、変化に富んだ景観が作られております.固い片麻岩や火山岩類は高い崖や磯をつくり、軟らかな堆積岩類の海岸は浸食されて湾となっていたり、波食棚ができていたりします。  この海岸の火山岩と堆積岩が作られた2600万〜2400万年前頃(漸新世末)は、日本海ができ始めていた頃で、隠岐諸島や本州はユーラシア大陸の一部でした。この頃の島後東部では、激しい火山活動が起こり、火砕流や溶岩が大量に噴出しました。また、ところどころにできた湖沼には、周りの陸地から火山噴出物起源の土砂が供給され、ときには多量の土砂が土石流となって流れ込んできました。浄土ヶ浦にはこの湖底に堆積した地層が分布しています。

また、崎山岬の崖には約265万年前に噴出した厚さ10m程度の玄武岩溶岩がみられます。この溶岩は直径が20cm以上の円礫を含む礫層に挟まれていることから、谷に沿って流れてきたと考えられます。その後、谷を作っていた古い地形は浸食されて無くなり、昔の谷を埋めた溶岩が山に姿を変えているのです。溶岩にはほぼ垂直な割れ目が数10cm間隔でできていますが、これは溶岩が冷えて収縮するときにできた割れ目です。この玄武岩の露頭に行くことは大変難しいですが、浄土ヶ浦から遊歩道を東に100mほど進むとこの玄武岩の大小の転石が落ちています。玄武岩中には長さ数〜10cmの黄緑色ないしオリーブ色の粒がみられることがあります。これはカンラン石という鉱物で、深さ数10kmのマントルから運ばれてきたものと考えられています。

全景

写真2:海よりみた崎山岬

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アクセス

国道485号あるいは西郷布施線で布施支所前まで行き、そこから北に約200m町道を行くと浄土ヶ浦入口の駐車場があります。キャンプ場横には、2本の遊歩道があります。一つは浄土ヶ浦経由、もう一つは灯台経由でともに崎山岬展望台に行きます。


関連する情報

風待ちスタジオ(〒685-0014島根県隠岐郡隠岐の島町西町): http://kazematikaidou.gozaru.jp/

参考文献: 山内靖喜・村上 久・中山勝博(1995)島根県隠岐郡布施周辺の古第三紀時張山累層.島根大学地質学研報、 no.14、 p.81-88.


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園特別保護地区、国指定名勝。


地質学的な意義

浄土ヶ浦ではこれらの地層が堆積した湖沼の環境を知る手がかりがいくつかみられます。第一は、写真に示すような緩やかな波状の縞模様が地層中にみられます。これは暴風時に深さ40m程度より浅い水底の堆積物が波で動かされてできた模様(ハンモック状斜交層理)です。このことから、この湖は浅かったことがわかります。

第二に、堆積物中のところどころに直径0.5〜1cm程度で、灰白色の殻をもつ球状のものが多数みられます。これらは火山から大気中高く噴出した噴煙中の火山灰が何らかの原因で互いに付着してできたもので、火山豆石とよばれています。湖沼の周囲や湖底では激しい噴火活動が起きていたことが判ります。また、長径が40cm以下の大きな礫を多く含む泥岩層がありますが、これは土石流が運んできた堆積物で、湖沼の周りには土石流が発生しやすい山地があったことを示すようです。

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