[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義] みどころ約1500万年前頃(中新世中頃)の島根半島は火山活動の激しい海底でした。とくに半島北部の笠浦と加賀を結んだ線より北側には大きな海底火山がありました。笠浦半島の海岸にはこの海底火山に関係した堆積岩が広く露出しております。 笠浦港の北側船着き場から真北に向かって人家の間を通る小道を行くと、北側の磯に出ます。磯伝いに西に約20m行った地点1では、径40cm以下の角礫や円礫が密集した礫岩が下位の地層を削り込んでいます(写真1)。この礫岩中には径1〜3mmの穴やレンズ状の空隙を無数にもち、縁が不規則に凸凹した黒色の礫がところどころにみられます。このような礫は軟らかい状態、すなわち高温で流れたことを意味します。すなわち、溶岩や火砕流が噴出したときに火口付近の堆積物がその衝撃で崩壊して生じた海底土石流堆積物です。
さらに磯伝いに地点2に行きますと、最大直径が5mもある青灰〜黒灰色の岩塊を多数含んだ礫岩が崖の麓にみられます。この礫岩中の礫のほとんどは安山岩です。さらに、巨大な礫はしばしば礫全体が割れかけたような割れ目がありますが、その割れ目は礫の周りの細かな部分(基質)には続いていません。礫だけが割れかけているのです。ほとんどの礫が同じ岩石で、径が数mもある礫を多量に含んでいることから、これらは海底火山の山体が崩壊して生じた土石流の堆積物と考えられます。大きな礫の割れ目は、巨大礫が土石流によって運ばれる途中にお互いにぶつかり合ってできたものです。 巨大礫の崖から20m程海側にいきますと、高さ1m程の崖(写真3)があり、その下部には径1cm程度の礫を含む火山灰や軽石などの火砕物からなる岩石(火砕岩)があります。この火砕岩は上に向かって礫が細かくなっていますが、すぐにまた少し粗い粒子の火砕岩が重なります。このように上に向かって堆積物の粒子が細粒になるのを何回か繰り返しながら、全体としても細粒になっています。これは二重級化といいます。海底火山から大量の火砕物が噴き上げられると、噴煙物は上に向かって延びて噴煙柱をつくります。しかし、すぐに噴煙柱の下部から崩れて、噴煙柱に含まれていた火砕物は泥水状の流れ(混濁流)となって海底火山の山腹を流れ下ります。この流れは流速が低下する火山の麓に火砕物を堆積させますが、しだいに流速が遅くなるため、より細粒な堆積物しか運んできません。そして、噴煙柱の下から上へと次々と崩れていき、その度に火砕物の流れが生じます。噴煙柱の上の方の火砕物はしだいに細粒になりますので、混濁流が運んでくる火砕物もしだいに細粒になるのです。 駐車場に戻ったら、地点4までいきますと水際の火砕岩中に細粒の花崗閃緑岩が礫として多数含まれています。その当時の海底の地下を作っていた古い岩石(基盤岩)が、マグマに取り込まれて火砕流として噴出したものです。このことから、中新世の地層の下には花崗閃緑岩が土台となっていることが判ります。 アクセス松江駅から車で約40分で笠浦港に着きます。 関連する情報このweb siteの「桂島」、「佐波海岸」、「潜戸」でも海底火山噴出物が見られます。 天然記念物などの指定情報大山隠岐国立公園 地質学的な意義陸上の火山と同じように、海底火山の麓には噴出物と火山体の崩壊による堆積物の両方が堆積します。このような堆積物はその特徴からどちらの成因によるものか区別できるのです。とくに、 火砕岩中にどのような岩石の礫が入っているか、とくに一種類の岩石の礫が大半を占めるか、それとも多くの種類の岩石の礫が含まれるかで、その堆積物の成因が違います。 また、礫がどのような形態で入っているか、級化あるいは逆級化を示すかなどの違いは堆積物を運んできた流れの違いを示します。 |