出雲地方のジオサイト

花仙山のめのう脈

松江市玉湯町玉造温泉周辺

  1. めのう公園駐車場
  2. めのう公園採掘穴跡
  3. 出雲玉作資料館
  4. 川辺の出湯跡
  5. 足湯場

キーワード:大森層 安山岩 めのう 岩脈 中新世

(執筆:山内靖喜)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「松江」「玉造」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

全景

花仙山を北西からみる(写真提供:出雲玉作資料館)
花仙山は長い間の風化・浸食によって今ではなだらかな丘のような山になっていますが,約1500万年前には多量の溶岩を噴出していた火山でした.

弥生時代末から平安時代にかけては勾玉(まがたま)や管玉(くだだま)の材料として,明治時代以降では装飾品や置物の材料として花仙山でめのうが採掘されてきました.採掘は昭和50年代まで行われていました.玉造温泉街東側の斜面のめのう採掘跡の穴の内部が整備されて,採掘することなく残されためのう脈(幅約60〜50cm)が見られるようになっています.また,遊歩道沿いの赤土中にもめのうの小さな脈がみられます.

花仙山の麓では,それらのめのうから勾玉や管玉を作った工房跡の玉作り遺跡が30ヶ所以上みつかっています.出雲玉作資料館下の史跡公園は,古墳時代の玉作り遺跡がみつかった場所のひとつで,そこには玉作りの工房が復元されております.また,出雲玉作資料館では多くの遺跡から出土しためのう製品(国指定重要文化財)やそれらを制作した道具類などもみることができます. さらに足を延ばすと,出雲国風土記に「川辺に湯が湧き」とある玉造温泉始まりの跡(川辺の出湯跡)や玉湯川岸の足湯場があります.なお,「いずもまがたまの里伝承館」では勾玉作りの体験ができます.

一般にめのう(瑪瑙)とよばれているものには,鉱物学的には玉随(ぎょくずい)の一種で,主に細かい繊維状石英の集合体です.めのうには,白,赤,青,緑などさまざまな色をしたものがあります.なお,碧玉(へきぎょく:ジャスパー)とよばれる宝石も,鉱物学的にはめのうと同じ玉随です.

めのう


アクセス

山陰道松江玉作ICの南西方約4.5kmの出雲玉作資料館で“めのう公園”駐車場への道を聞くと良いでしょう.駐車場から採掘穴跡までは遊歩道が整備されています.


関連する情報

出雲玉作資料館:http://www.town.tamayu.shimane.jp/shiryoukan/

いずもまがたまの里伝承館:http://www.magatama-sato.com/


天然記念物などの指定情報

  • 出雲玉作跡:国指定史跡
  • 出雲玉作跡出土品: 国指定重要文化財

地質学的な意義

花仙山山麓で採掘されためのうは,花仙山を作っている安山岩の溶岩中に脈として入っています.この溶岩は今から約1500万年前(中新世中頃)に陸上に噴出して,古い花仙山をつくりました.その後の大半の時代,花仙山は陸上の山であったため,この溶岩は長い間に風化作用を受け,硬い岩石が軟らかな赤土(粘土)になりました.その頃,溶岩中の割れ目などの空隙を流れていた地下水から石英の成分(二酸化珪素)が沈殿して,めのうができました.しかし,めのうは風化作用に強いため赤土の中にそのままの形で取り残されました.また,花仙山が今より高い山であったときに,風化で弱くなった山腹が崩れて,麓にたまった土砂の中にもめのうが含まれていました.とくに,花仙山西麓では溶岩の多くが風化作用によって地下深くまで赤土になっていて,良質のめのうが産出するので,この地域では古墳時代などの玉作跡の遺跡が数多く見つかっております.

めのう

[出雲地方のジオサイト一覧へ | 島根ジオサイト百選へ]