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古浦海岸の貝化石群集

松江市鹿島町古浦海岸

  1. 古浦連絡所(一畑バス バス停)
  2. 古浦(一畑バス バス停)
  3. 古浦層の層理が発達した泥岩層と砂礫層
  4. 古浦層の塊状泥岩層と化石層

キーワード:古浦層 淡水性貝化石群集 化石層 コササヒメタニシ


(執筆:入月俊明)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「恵曇」より

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みどころ

写真1

松江市鹿島町古浦の海水浴場から海岸に沿って南南西へと進み、砂浜がなくなり、山が海岸に迫るあたりから地層が露出し始めます(写真1)。この地層は古浦層といい、今から約2000万年前前後(前期中新世)に、礫・砂・泥などが主として淡水〜汽水域に堆積してできました。最初に見られる地層は薄い砂岩層を挟む泥岩層とその上の礫岩層です。泥岩層の上部は淡灰色の地層と暗灰色の地層が、それぞれ厚さ数mm〜数cm単位で交互に重なっており、きれいな縞状(層理や葉理といいます)を呈しています(写真2)。この地層は広く海岸沿いに追跡できます。ここから化石は産出しませんが、さらに西へと進むと、これらの地層よりも下位にあたる塊状の暗灰色泥岩層が海岸線付近に露出し始めます(写真3)。ここの地層の表面をよく観察すると、1 cm前後の巻貝化石が散在している様子が観察できます(写真4)。また、非常に密集している層もあります。これらのほとんどは貝殻が残っていない印象化石で、種名はコササヒメタニシといいます(写真4)。また、数は少ないのですが、淡水性二枚貝であるガマノセガイの仲間やクサビイシガイの仲間などの化石もみられます(写真5)。

写真2〜5


アクセス

JR松江駅から古浦行きのバスに乗ると約40分で古浦につきます。そこから徒歩20分程度です。または、恵曇あるいは片句行きのバスに乗ると約35分で恵曇連絡所につきます。そこから徒歩30分あまりです。

自家用車の場合は松江市街地から県道37号(松江鹿島美保関線)で約30分、古浦海水浴場付近にはトイレも完備した駐車場があります。そこから徒歩20分あまりです。

※海岸沿いを歩くことになりますが、急崖もあるため、落石や滑落などに注意して下さい。軽装はつつしみましょう。


関連する情報

猪木幸雄・村上允英・大久保雅弘,1987(編).「中国地方」.共立出版.

松岡敬二・岡本和夫,1999.豊橋市自然史博研報,no.9,25-31.


天然記念物などの指定情報

特になし


地質学的な意義

ここでみられる貝化石は古浦層が堆積した湖に生息していたものであると考えられています。古浦層以外にも長崎県の野島層群や島根県隠岐の郡層からも同じ種の化石が産出します。このような湖沼は日本列島が中国大陸から分離し始め、九州北部から北陸にかけて形成された低地帯に広がっていたと考えられています。このように、古浦層は日本海が形成される前の地層で、古浦海岸はこの地層の模式地(典型的な地層が露出し、学術雑誌で定義された場所)に指定されています。また、この時期の淡水性貝化石群集の報告は少なく、古浦海岸の化石産出地点はこのような場所の一つとして学術上大変貴重です。古浦層からは貝化石以外にも島根半島の美保関周辺でワニの足跡化石がみつかっています。

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