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久手海岸(くて・かいがん)

大田市久手町久手

  1. 巨大岩塊
  2. 珪化木

キーワード:大森層 巨大岩塊 岩屑なだれ 珪化木 中新世


(執筆:新宮敦弘)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「石見大田」より

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みどころ

大田市久手港〜波根にかけての海岸には海食崖が発達し、崖には約1500万年前(中期中新世)に堆積した、大森層の砂岩、土石流堆積物、2枚の酸性軽石凝灰岩がみられます。

写真1

久手港付近の海岸では淡黄色の酸性軽石凝灰岩中に、暗色の安山岩質溶結凝灰岩の巨大岩塊が含まれているのが観察できます。最大の岩塊は長さ60mにもなり、遠くからみて初めて岩塊であることがわかる大きさです(写真1)。

この地層は火山から噴出した軽石流(主に軽石からなる火砕流)が堆積したもので、おそらく、もともとあった安山岩質溶結凝灰岩からなる山体を破砕し取り込みながら海に流れ込んだものと考えられ、同時に当時海岸にあったであろう円礫も取り込んで堆積しています。

この酸性軽石凝灰岩に含まれる巨大岩塊や円礫はいずれも単一の安山岩質なものばかりであり、酸性軽石凝灰岩が噴出する前は安山岩の火山地帯であったと考えられます。

波根西の海岸には大森層の土石流堆積物中に珪化木がみられ、国の天然記念物に指定されています(写真2)。よく探すと、珪化木や炭化木が付近の地層のあちこちに含まれていて、長いものは土石流の流れの方向を、短いものは流れに直交する方向に並んでおり、短いものは土石流とともに転がるように、長いものは土石流に乗って流されるように運ばれたことが想像できます。

なお、天然記念物の珪化木付近の崖では、標高10m位のところに人頭大の円礫を含む第四紀の海岸段丘堆積物もみられます。この海岸段丘堆積物の小さな礫の中には、チャートなどの基盤岩に由来する礫も含まれています。さらに、この崖から100mほど陸側に入ったところの山腹の傾斜は緩くなっており、細かな砂が多くみられますが、この砂は緩い傾斜の山腹に砂丘をつくっているのです。

写真2


アクセス

JR山陰本線久手駅より徒歩10〜15分。自家用車の場合、国道9号沿いの珪化木の案内看板が目印。


関連する情報

しまね観光ナビ:http://www.kankou.pref.shimane.jp/

文化遺産オンライン:http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=77806


天然記念物などの指定情報

波根西の珪化木は国指定の天然記念物(昭和11年9月3日)


地質学的な意義

巨大岩塊を運ぶ極めて激しい「岩屑なだれ」を発生させた火山活動としては、1980年のセントヘレンズ火山の噴火が有名です。およそ1,500万年前には久手〜波根海岸近くにあった火山がセントヘレンズ火山のように山体を壊すような大噴火を起こし、大量の軽石を含む火砕流を発生させました。この火砕流は崩れた山体の一部を巨大岩塊として取り込んだり、山腹の林の樹木を巻き込んで海まで運びました。さらに、海岸付近では波で円磨された礫を取り込んだりしました。ここでみられる地層はこのような激しい火山噴火によって作られたものです。

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