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岬の爆裂火口

島根県隠岐郡隠岐の島町

この爆裂火口は、火口の東半分が吹き飛んだもので、岬玄武岩を構成する5つの地層のうち下部火砕岩層、中部溶岩層、上部火砕岩層の3つを見ることができます。


キーワード:岬玄武岩 マグマ水蒸気爆発 タフリング ベースサージ 更新世


(執筆:村上 久)

地図
国土地理院発行1:25000地形図[西郷]より

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みどころ

全景

写真1:岬の爆裂火口をフェリー航路から望む

西郷港南西の隠岐空港がある地区は岬町と呼ばれ、中期更新世前期(いまから約55万年ほど前)に活動した岬玄武岩が東西3km×南北3kmにわたって標高100m以下の溶岩台地を形成しています。空港の造成工事前には、直径200~300m、標高150〜160mのスコリア丘(1)が北西−南東方向に配列し、特異な火山地形を形成していましたが、工事で消滅し、残るのはここに紹介する爆裂火口(2)のみとなりました(上記地図参照)。

この爆裂火口は、火口の東半分が吹き飛んだもので、岬玄武岩を構成する5つの地層のうち下部火砕岩層、中部溶岩層、上部火砕岩層の3つを見ることができます。下部火砕岩層には特徴的に海蝕洞が形成され、黄褐色を呈していますが、上部は高温酸化を受けて赤色化しています。火口底から伸びる赤色の高温酸化帯は南・北で急傾斜し、火口壁の形を見事に現しています。この上位には暗灰色の中部溶岩層と黄褐色の上部火砕岩層が火口の西側壁を形成しており、緩く西に傾斜しているのをフェリーから見ることができます(写真1)。

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写真2:岬の溶岩台地を南から望む


アクセス

自家用車あるいはレンタカーを利用する場合は、西郷港から隠岐空港経由で約10分。


関連する情報

村上久(2008)爆裂火口の断面を見る−西郷港入り口−.
島根県地学会会誌,第23号,P4.
「岸浜の黒曜石」の近く


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園特別地域


地質学的な意義

岬玄武岩は隠岐で最も新しい火山岩の1つです。下部火砕岩層はマグマー水蒸気噴火(爆発)あるいは水蒸気爆発によって堆積したもので、細〜小礫を含む斜交〜平行層理が発達しており、その中には火山弾も多く見られます(写真3)。また中部溶岩層は、塊状部とクリンカーと呼ばれるガサガサした多孔質のコークス状岩片をともなうかんらん石玄武岩の溶岩で、何枚も積み重なっています。これは溶岩の温度が低かったり、溶岩の粘性が高い場合には、溶岩の表面がクリンカーで覆われやすくなるためで、この特徴を持つ溶岩はアア溶岩と呼ばれます。.上部火砕岩層は下部火砕岩層同様の成因による堆積物で、下部火砕岩層と同じような特色を持っています。

古い地形図を基に地形傾斜から溶岩流の給源を推定すると、1つは旧空港の北側付近、もう1つが爆裂火口、さらに大床山とその北側にも存在し、スコリア丘の位置とほぼ一致しています。

写真

写真3:下部火砕岩の斜交層理と火山弾

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