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鬼の舌震い(した・ぶるい)

島根県仁多郡奥出雲町

花崗岩の浸食によってつくられた、有名な景勝地です。



キーワード:渓谷 大馬木川 花崗岩 ポットホール 古第三紀


(執筆:大坂 理)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「横田」「下横田」より

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みどころ

写真1

鬼の舌震いは、 斐伊川支流大馬木川の中流部に約2kmにわたって広がる渓谷です。河の両側にそそり立つ灰白色の均質な岩壁、川底に積み重なる直径10mにもなる巨大な岩塊と水量豊かな清流が周りの自然林と相まった特異な景観を呈しています。この岩壁や川底の岩塊は花崗岩という岩石から作られております。花崗岩は地下深くでマグマがゆっくりと冷えて固まった岩石です。ここの花崗岩は約5000万年前(古第三紀)に中国山地の地下深部で作られましたが、その後に地殻が上昇し、それに伴って地表はしだいに浸食削剥され、地下深くにあった花崗岩が現在地表に現れています。

マグマが地下で冷えて固まって花崗岩になるとき、その体積は収縮するため、花崗岩中には数m〜数十m間隔に割れ目(節理)が無数にできます。その後、地表に現れた花崗岩は、風化侵食によって大きな四角形の岩塊に壊されるのです。溶岩に見られる柱状節理に比べて、花崗岩中の節理の間隔が大きいため、花崗岩は巨石や高く切り立った岩壁を造りやすい性質があります。花崗岩の大地が大馬木川の浸食によってV字形に削られた結果、鬼の舌震いの美しい渓谷が造り出されたのです。

また、ときどき河岸の岩盤に直径数10cmの半球状の窪みがみられます。これは、 岩盤中の凹みや割れ目に入った小石が岩盤を削って作ったもので、ポットホール(甌(おう)穴(けつ))といいます。増水時には、流れも激しくなり、その水流によって窪み中に渦が発生します。この渦流によって小石が回転して、周りの岩盤を円形に削って半球状の窪みが作られるのです。ポットホールをみつけたら、穴の中を見て下さい。穴の底に丸く削られた石が入っていることがあります。この石が回転して岩盤を削ったのです。大きなポットホールには直径1m以上のものもあり、ところによっては「雨つぼ」とも呼ばれています。

写真2,3


アクセス

自家用車利用の場合は、国道314号線で奧出雲町三成に行き、そこから主要地方道玉湯吾妻山線を約4km行くと宇根に至る。宇根より案内板に従って約300m行くと駐車場があります。


関連する情報

奥出雲町:http://www.town.okuizumo.shimane.jp/oni/index.html


天然記念物などの指定情報

国指定の名勝天然記念物、島根県立自然公園指定


地質学的な意義

この花崗岩は鉱物の結晶が大きいので一つ一つの鉱物を肉眼で見分けることができます。無色透明で粒状の塊で貝殻状の割れ口をもつのが石英、 灰白色でしばしば長方形ないしその破片を示すのが斜長石、同じく淡桃色のカリ長石が、それぞれ径5〜10mmの大きさで見分けることができます。また、径1〜3mmの大きさで暗黒色の薄い六角形をしており、ときには風化によって黄色に変色した黒雲母が明瞭に観察できます。

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