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三瓶火山噴出物の露頭

大田市三瓶町志学

活火山に指定されている三瓶火山。その歴史は軽石や火山灰が降り積もった地層が教えてくれます。



キーワード:三瓶火山 大田降下火山灰層 池田降下軽石層 浮布降下軽石層 第四紀


(執筆:中村唯史)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「石見大田」より

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みどころ

写真1

三瓶山南麓の志学地区と上山地区を境する尾根にある志学展望所。カルデラ壁にあたるこの尾根からは、三瓶全峰を見渡すことができ、崖には三瓶火山の第2活動期から第7活動期までの噴出物が積み重なった地層が露出しています。ここは三瓶火山の生い立ちを知るには絶好の場所と言えます。

ここの露頭の最下位は、約7万年前(第2期)の大田降下火山灰層です。細粒な火山灰を主体とし、水平な平行葉理が明瞭です。火山豆石も見られます。この時の活動は大規模な火砕流を伴い、その噴出物は大田軽石流堆積物と呼ばれ、大田市街や美郷町、出雲市佐田町方面に厚く分布しています。上山地区にも露頭が点在しています。

大田降下火山灰層の上位には、約3万年前の池田降下軽石層、約1.6万年前の浮布降下軽石層が重なります。前者は白色の新鮮な軽石を多く含み、後者の軽石は風化が進んで黄色くなっています。浮布降下軽石層の上位には、クロボク層を挟んで灰色の火山灰層が重なります。付近の他の露頭では、クロボク層中に約4800年前の角井降下火山灰層と約3700年前の太平山降下火山灰層の2層を識別できますが、ここではかく乱によって両者が混じり、1層に見えています。三瓶火山の活動としては、1万年前にも小規模な噴火がありますが、この場所ではその噴出物は認められません。

三瓶火山の噴出物は、浮布降下軽石以前はよく発泡した軽石質のものが主体ですが、1万年前以降は岩石質のものが主体になります。これは噴火様式の違いを反映しています。古い時期には規模が大きく爆発的な軽石噴火を行いましたが、1万年前以降は比較的ゆっくりと溶岩が噴出して、溶岩ドーム群を形成しました。

写真2


アクセス

JR大田市駅から車で30分
三瓶線バス停「下の町」から徒歩20分


関連する情報

島根県立三瓶自然館:http://nature-sanbe.jp/


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園三瓶山地区

写真3


地質学的な意義

三瓶火山噴出物は三瓶山東方に広く分布し、なかでも第1活動期(約10万年前)の木次降下軽石は広域火山灰として知られ、東北地方で分布が確認されている。志学展望所の崖は、三瓶山周辺で複数時期の噴出物をみることができる数少ない露頭として貴重である。

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