志都の岩屋(しづ の いわや)
島根県邑智郡邑南町出羽地内
キーワード:花崗岩 巨岩群 コアストーン マサ土 古第三紀
(執筆:月森勝博)
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国土地理院発行1:25000地形図「出羽」「生田」より
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[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]
みどころ
志都の岩屋は、邑南町南東部に位置する弥山(標高607m)の南東側斜面一帯に分布する黒雲母花崗岩の未風化岩塊の一群であり、縄文時代以降、巨石崇拝や山岳信仰の対象物として修験者の霊場にもなっています。
この黒雲母花崗岩の地質時代は、新生代後期古第三紀に対比され、中国山地一帯に広く分布している花崗岩類の一翼を担っています。

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写真1 巨石群の一部は、清水が湧き出し名水と
して神社の背面に奉られている。 |
写真2 志都岩屋散策コース案内板(志都岩屋神社) |
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写真3 斜面上に露出する巨石
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写真4 斜面上に露出する巨石
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アクセス
島根県邑智郡邑南町出羽地内
志都の岩屋へは、車では広島方面から国道261号を邑南町瑞穂地内で右折し、県道6号を進み、さらに志都神社入口を右折し、約3分程度で岩屋神社前に到着します。
また、バスでは道の駅「瑞穂」より町営(スクール)バス「大林」行き乗車、志都神社口下車。徒歩約15分で志都岩屋神社に到着し、観察路を散策しながら約20分で弥山頂上まで行けます。
関連する情報
島根県 自然環境課 shizenkankyo@pref.shimane.lg.jp
TEL :0852-22-6172 FAX :0852-26-2142
天然記念物などの指定情報
・島根県指定 天然記念物及び名勝 (昭和54年8月24日)
・島根の名水選定 志都の岩屋の薬清水 (昭和60年6月11日)
・島根県選定 みんなでつくる身近な自然観察路(平成2年11月1日)
地質学的な意義
志都の岩屋の斜面上に分布する巨石群は、花崗岩体の風化の過程で生成されたものです。この付近の風化花崗岩は、亀裂間隔が1メートル以上におよび、「コアストーン」と呼ばれる未風化礫(円磨された岩塊で大きなものは数メートルに及ぶ)が折り重なって特異な産状を形成しています。その見事な景観ゆえに、信仰の対象物として親しまれてきました。
ところで、山陰の花崗岩は、良質な鉄鉱成分を多く含んでおり、風化した岩石からこの鉄鉱が採取されて製鉄産業に大きく寄与しました。また、「マサ土」は土木工事のための良質な土質材料としても利用価値が高いものです。一方、マサ土化の進んだ斜面は、がけ崩れや土石流といった土砂災害を起こし、山腹斜面に存在するコアストーンは落石災害を起こす危険性があります。そして、亀裂や節理に囲まれた岩塊は、岩盤崩壊や岩すべり災害などの原因となることもあります。
このように人間にとっての風化花崗岩は、信仰の対象物として、資源材料として、または、自然災害を引き起こす脅威として深く関わりをもつ存在なのです。
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