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惣津(そうづ)海岸と明島(あきしま)

島根県松江市美保関町惣津

星印:駐車位置

  1. 不整合の観察地点
  2. 枕状溶岩の観察地点
  3. 褶曲構造の観察地点
  4. ペペライトの観察地点

キーワード:古浦層 成相寺層 不整合 背斜褶曲 中新世


(執筆:新宮敦弘)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「境港」より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ

写真1

惣津は松江市北東部の島根半島の日本海沿岸に位置し、隠岐航路で知られる七類(しちるい)港の西約1kmの玉結(たまゆ)湾に面しています。玉結湾東側の海岸には、新第三紀中新世の古浦(こうら)層の砂岩泥岩互層、成相寺(じょうそうじ)層の黒色泥岩とドレライトの貫入岩が分布し、黒色泥岩は波食棚を作っています。ここでは古浦層と成相寺層の間の不整合面、成相寺層中の背斜褶曲、玄武岩質枕状(まくらじょう)溶岩、ドレライトの貫入に伴うペペライトが観察できます。

波食棚の南端、地形図の地点1に示すあたりで、古浦層と成相寺層の間の不整合面を観察できます。ある地層が堆積後隆起し、陸上で侵食作用を受けたあとに、その上に新しい地層が堆積したとき、両者の関係を不整合といいます。ここでは灰色の古浦層の泥岩勝ち互層と成相寺層の黒色泥岩の境界の不整合面が確認できます(写真1)。

写真2,3

波食棚中ごろにある黒い岩の高まり(写真2)は、黒色泥岩の上に重なる玄武岩の枕状溶岩です(地点2)。枕状溶岩は玄武岩などの粘性の低い溶岩が水中に噴出したときにできる団塊状の構造をもつ溶岩で、団塊の表面は急冷されてガラス質の皮殻となっています。この溶岩を断面で見ると団塊状の構造がちょうど枕が重なっているようにみえることから枕状溶岩とよばれています。枕状溶岩は黒色泥岩の上に緩く重なっていますが、干潮時には岩礁より少し沖側で、周囲の黒色泥岩と急角度で接する箇所も観察でき、玄武岩の噴出跡と考えられます(写真3)。

枕状溶岩から少し北へ進むと、写真4にみられるような背斜褶曲が観察できます(地点3)。ここでは黒色泥岩中に淡色の凝灰質砂岩をはさんだ地層が、海側に凸の弧を描いてみえます。道路付近から眺めるとよくわかります。

写真4

波食棚の北端の明島には遊歩道が整備されています。水際の遊歩道付近では泥岩の上にドレライトが重なり、神社がある島の頂上ではドレライトの上に泥岩が重なっているのが観察できます。水際付近のドレライトとの境界付近の泥岩中には、細かい破片状になったドレライトが無数にみられます(地点4)。これは、ドレライトが海底に堆積している泥岩中に貫入したとき、泥岩はまだ軟らかく、また多量の水を含んでいると、その水は貫入してきたドレライトの熱で熱せられて水蒸気になります。その水蒸気が泥岩とドレライトの境界部に溜まると、そこで水蒸気爆発がおき、ドレライトは破砕され、飛び散って周辺の泥岩中に取り込まれたのです。このような泥岩中に飛び散ったドレライトを含む黒色泥岩はペペライトとよばれます(写真5)。ペペライトは玄武岩質マグマが急冷、破砕された小岩片を含む細粒砕屑岩のことです。

写真5

惣津海岸は狭い範囲に多くの地質現象を観察できる格好の地質見学スポットです。できるならば海の穏やかな好天時で、干潮の時間帯に訪れるとよいでしょう。


アクセス

松江市街地より七類港方面へ自家用車で約30分、七類港より自家用車で約5分

海岸へ下ると道路が多少広くなっているところがあります。 そこに車を停めて最初の観察場所である不整合の露頭(地点1)は、海岸へのスロープを下りて正面の海岸です。


関連する情報

明島から東に約300m行くと、美保関隕石落下地点があります。


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園(普通地域)


地質学的な意義

島根半島地域で最も古い地層とされる新第三期中新統の古浦層と、海成堆積物である同じく中新統の成相寺層は整合関係であるという説と不整合関係であるという説とがあります。惣津の海岸では両者のあいだの不整合関係が観察できます。

また、成相寺層の海成黒色泥岩の堆積した時期には、玄武岩やドレライトの火成活動が活発で、枕状溶岩や岩脈などが形成されていました。

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