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裏匹見峡・渓谷と断層谷

益田市匹見町匹見

白亜紀火山岩類と断層や節理が織りなす渓谷が堪能できます。

キーワード:匹見峡 匹見層群 溶結凝灰岩 断層 白亜紀

(執筆:加藤芳郎)

地図
国土地理院発行1:25000地形図「野入」より

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みどころ

写真1

匹見峡の一つである裏匹見峡は、西中国山地の最高峰・恐羅漢山(標高1346.4m)を始め、1000m級の山々を源流とする広見川下流部の渓谷です(写真1)。渓谷に沿って延長3.5kmの自然研究路が整備されています。

この一帯では約9000万年前の中生代白亜紀に非常に大規模な火山活動が起き、流紋岩〜デイサイト質の火砕流が噴出しました。この火砕岩は匹見層群と呼ばれ、主に凝灰岩や溶結凝灰岩からできています。これらの岩石に含まれている長石や石英の結晶は破片状をしており、結晶固有の形である自形はしていません。周りより色が少し濃くて、自形の斑晶を含むレンズ状の形をした本質レンズ(写真2)がみつかることがあります。これは噴火の時に飛び散った軽石が厚く堆積した火砕流の重みでつぶされて扁平になったもので、このような本質レンズを含む岩石は溶結凝灰岩です。岩脈として匹見層群に貫入した石英斑岩は、斜長石や石英の自形斑晶が目立つ岩石です。

急流や滝、淵を寄せ合う裏匹見峡の河床は、北東−南西方向と北西−南東方向との組合せによって直角に屈曲しています。この地域に発達する断層や岩体に特有の節理の方向に規制されているためです(写真3)。

裏匹見峡の近くにはさらに表匹見峡と奥匹見峡があります。表匹見峡はごつごつとした岩肌と淵が織りなす渓谷です。奥匹見峡では様々な高さの滝がみられます。両渓谷とも匹見層群の溶結凝灰岩や凝灰岩からなります。

写真2,3


アクセス

匹見町中心部より国道488号を東へ約4km入ると、裏匹見峡の自然研究路起点となる匹見峡レストパーク(図中の赤丸位置)に着きます。
表匹見峡は県道波佐匹見線の旧道沿いにあり、奥匹見峡は国道191号から入ります。


関連する情報

島根県環境生活部自然環境課:http://www.pref.shimane.lg.jp/environment/nature/shizen/shimane/shimane_kouen/


天然記念物などの指定情報

西中国山地国定公園


地質学的な意義

匹見層群は、西は鹿足郡吉賀町柿木村から、東は邑智郡美郷町にかけての北東−南西方向に幅10〜40km、延長100km以上の規模で分布しています。火山活動に伴って形成された火山構造性陥没体が、巨大噴火による火砕流堆積物で埋積されたものです。岩体両側の基盤岩である中・古生界とは北東−南西方向の断層を境界としています。匹見層群の形成途中に花崗斑岩や石英斑岩の貫入があり、形成後には広島花崗岩の大規模な貫入を受けています。

匹見層群の分布域には北東−南西方向の断層が顕著に発達しています。裏匹見峡の近くでは、匹見の街はずれで匹見川と合流する紙祖川の谷筋が、断層に沿って直線状に形成された断層谷です。

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