隠岐地方のジオサイト

久見のローソク島

−夕日の炎が海上に燃える−

島根県隠岐郡隠岐の島町

島後西部の久見地区の西約2kMの海上には多くの小島が存在しています。中でも、ローソクの形をしたローソク島が夕日に映える様子は圧巻で、天空にそそり立つ鉄砲岩、こんもりした馬背島などが独特の景観をかもし出しています。

a:林道入り口
b:展望台1
c:展望台2(b地点から徒歩で15-20分)


−−>印刷用ファイル(PDF:515KB)


(推薦:堤忠美さん外23名)
(執筆:村上 久)


国土地理院発行1:25000地形図「隠岐北方」,「西村」]より

[みどころ | 交通 | 関連情報 | 指定 | 地質学的な意義]


みどころ



写真1:夕日の炎が燃えるローソク島(隠岐の島町提供)

 島後西部の久見地区の西約2kMの海上には多くの小島が存在しています。中でも、ローソクの形をしたローソク島が夕日に映える様子は圧巻で(写真1)、天空にそそり立つ鉄砲岩、こんもりした馬背島などが独特の景観をかもし出しています。


写真2:ローソク島の流理構造と節理

 この海岸や小島を形成している地層は、約550万年ほど前に噴出した重栖層と呼ばれる火山岩類です。ここでは中性でアルカリ成分を多く含む粗面岩の溶岩と火砕岩が見られ、溶岩には流れた方向に鉱物が配列してできる流理構造や、溶岩が冷え固まるときにできる柱状節理が発達しているのが観察されます。ローソク島には海面の上に台のような平らな地形が見えますが、これは数千年前に海水準が今より少し高かったときに波の浸食によって作られた地形で,波食棚と呼ばれます。これより上部は柱状節理や流理構造に沿って岩盤が崩落し、
絶妙なバランスでローソクの本体と芯が形成されたことがわかります(写真2)。


写真3:馬背島の柱状節理・海蝕洞・タフォニ(写真右端)

 馬背島ではこの柱状節理が最も良く発達しています。ここでは節理に沿った浸食で形成された海蝕洞が見られます。また海面よりもかなり高い位置に楕円形をした窪みがたくさんできているのがわかります(写真3)。これは"タフォニ"と呼ばれ、岩盤の表面から水が蒸発する過程で、水に溶けていた塩類の結晶が成長し、その成長する圧力で岩盤が破壊される現象(塩類風化)と考えられています。これは海水の飛沫を受ける海岸域や砂漠などの乾燥地域、また内陸の山地にもしばしば見られます。



写真4:海岸の浸食地形    鉄砲岩(写真中央)と馬背島(写真右端)の間に見えるローソク島

 この"タフォニ"が成長するとオーバーハングした不安定斜面が形成され、岩盤の崩壊や落石が発生します。同じ環境が続くと、岩盤の崩壊したあと、また"タフォニ"が形成されて同じ事が繰り返され、浸食が進行していきます。ローソク島周辺に見られる小島は、もともと陸地と繋がっていたものが、さまざまな浸食作用によって岩盤が崩落し、運び去られて現在のような姿に変わったものなのです(写真4)。


アクセス

 自家用車あるいはレンタカーを利用する場合は、西郷港から国道485号を通って郡(こおり),
郡から県道を通って北方(きたがた)・代(しろ)を経由して久見(くみ)に向かう.代・久見間の途中で案内板に従って林道に入ると展望台に至る(約50分)。
4月1日〜10月31日は福浦港または重栖の赤崎港からローソク島巡りの観光遊覧船が就航(所要時間50分、要予約)。また他の観光スポットと陸上見学コースあるいは海上見学コースとセットになった観光タクシーもあります。


関連する情報

隠岐の島町: http://www.town.okinoshima.shimane.jp/

 このサイトの近くには重栖層の火山岩を対象にした「代のフィーダー岩脈」と「福浦トンネル」があります。


天然記念物などの指定情報

大山隠岐国立公園


地質学的な意義

 中新世の終わり頃は島後の歴史上最も激しい火山活動が起きた時代です.このときに噴出した溶岩のその後の風化・浸食によって作られた特異な地形や海岸線の後退の様子が観察できます。

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